後藤洋央紀の昇天・改

プロレスラーの必殺技は、その長いキャリアの中で、新技の開発やコンディションの悪化、危険すぎるために封印等…様々な理由で、違う技に変わってしまう事は、決し珍しい話ではありません。

そうして必殺技が変わった場合は、過去の技は封印状態になるか、繋ぎ技に格下げされてしまうか…が大半のパターンですが、いずれにしても好きだった技が見れなくなるなるのは何とも寂しいもの。

 

そんな技の一つには、後藤洋央紀がかつて必殺技として使用していた昇天・改も当てはまります。

 

2007年に凱旋帰国した後藤は、海外遠征で編み出したと昇天というブレーンバスターからサイドバスターの様に叩きつける技を必殺技としていましたが、昇天を武器に凱旋を果たしたのも束の間。

何とわずか数試合を経て昇天に改良を加えた昇天・改を開発してしまったのです。改良を加えるのはプロレス技に良くある事ですが、これは幾らなんでも早すぎました。

余りにも早すぎました。

昇天・改の開発により昇天はあっさり陽の目をみない技になってしまったので、それは残念な部分ではあるんですが、昇天・改は物凄く良い技なのでこれはこれで良かったとも思います。

 

昇天・改とは、ブレーンバスターの体勢で相手を持ち上げてから、相手を振り子の様に前方に振りながら、エルボードロップで浴びせ倒す強烈な技で、とにかく迫力満点で衝撃音も凄い割には、危険度もそこまで高くないというプロレス技としては、とても素晴らしい技。

ぶっちゃけ通常の昇天は、2005年に新日本にも来日していたマット・モーガンの必殺技マウント・モーガンドロップと同型なので、後藤が意識していたかは定かではないにせよ、エルボードロップにして改良を加えた昇天・改は、後藤の完全なオリジナルなので、これで良かったと思います。

 

この技は、当時のG1覇者・棚橋弘至とIWGP王者である永田裕志を標的に定めて、その壁をブチ破る為に開発された技で「この技をフィニッシュに使う。近い将来、俺の代名詞になるだろう」と新技に絶対の自信を持っていて本当に代名詞になってしまいましたね。

凱旋時の後藤の勢いは凄かったし、2008年にG1初出場にして初優勝という偉業を成し遂げたのも この昇天・改があったからこそ。

 

正しく後藤洋央紀とは、切っても切れない代名詞的な技だったんですが、残念な事に、2016年に後藤がCHAOSに加入してGTRを新必殺技としたのを機に、昇天・改は使われる事すらもなくなってしまいました。

これは本当に残念。

実際の破壊力はさておき GTRよりも昇天・改の方が迫力もあって見映えも良いので、必殺技としては勝っていたのでは?と個人的には、今でも思っています。

技の性質上 大きい相手には掛けにくいという欠点はありましたが、それにしても無くすには惜しい技。

 

自分を変えるためにCHAOSに入ったのだから、コスチュームだけではなく何か変わった部分を見せなきゃいけなかった…と言うのは分かるんですが、封印状態にするには少し勿体なかったですかね。

最も完全に封印したという訳でもなく 今でも大一番で使用する事はありますか、以前程の説得力は失われフィニッシュになる事もなく あくまで「GTRに繋ぐ為の隠し技」的なポジションに落ち着いちゃっています。

 

それでも久々に公開されると、やっぱり興奮しちゃうんですが、敢えてポジションを下げる様な事はせずに、GTRと昇天・改の2本柱でも良かったと思うんですけどね。

 

大好きな技だっただけに、つくづく惜しかった技です。