ランス・アーチャーのEBDクロー

誰が見ても分かりやすく 単純明快にして威力も充分な必殺技といえば、アイアンクロー。

形だけなら素人や子供でも容易に真似する事は出来るでしょうが、人並み外れた握力をもってして 初めて必殺技となるこの技は

誰でも真似で出来る技だが

誰にも真似できない必殺技。

正にそんな技です。

 

しかしアイアンクローが、必殺技と言われたのは昔の話で、現代に置いては必殺技どころか、使い手すらも余り居ない状況でした。

技の複雑化、高度化が進む現代のプロレス界で、アイアンクローが廃れていったのも時代の流れなので、ある程度しょうがない部分ではあります。

 

しかし誰が想像したでしょうか

再びアイアンクローが必殺技として 脚光を浴びる時代がやってきたのです。

 

それまでK.E.S.としてタッグプレイヤーで活躍していたランス・アーチャーは、タッグの実績こそ抜群でしたが、シングルでは大きな実績は、これと言ってありませんでした。

そんなアーチャーに、転機が訪れたのは2019年

相棒のデイビーボーイ・スミスJr.の新日本離脱により シングル戦線への参入を余儀なくされたアーチャーは、持ち前のポテンシャルを発揮して その怪物性で一躍大ブレイク。

その時アーチャーが新たな必殺技として投入したのが、アイアンクロー。

通称 EBDクローです。

 

失われた過去の必殺技を その価値を落とす事なく現代に復活させたアーチャーの功績は、素晴らしいと思います。

この時期のアーチャーはとにかく凄かった。 その巨体を活かしたファイトも去ることながら身体能力の高さを見せつけた上で、向かってくる物を寄せ付けない荒々しいファイト。

そして一度捕まえたら絶対に離さない新必殺技EBDクロー


相手の顔面を握り潰さんばかりに大きな掌で締め上げ、そのまま押し倒してフォールも狙えるという怪物じみた強さを発揮していたアーチャーに相応しい必殺技で、アーチャーが相手の顔面を掴もうとするだけで、客席から悲鳴が上がるほどに、恐怖の技として すっかり浸透していました。

そんなイメージとも比例する様に、これまでシングルの実績とは縁の無かったアーチャーが、IWGP USヘビー級王者に輝く事が出来たのも EBDクローの力が大きいでしょう。

それ程に恐ろしい技でした。

 

潜在能力を覚醒させたアーチャーの怪物性を象徴する様な技で
相手の顔面を掴もうとするアーチャー
その腕を掴み必死にディフェンスする相手

 
この攻防が実にスリリングで、新たに一つの見せ場となった事で、アーチャーの試合に緊張感が生まれる結果となりました。

 

90年代のプロレスに比べると 近年の日本マットは「デカくて怖くて強い外国人」というのが不足していましたが、EBDクローを習得したアーチャーは正しく「デカくて怖くて強い外国人」を体現していた選手だったと思います。

大きな身体に 大きな掌

これ程までに。アイアンクローが・・・EBDクローが似合う選手もなかなか居ないんじゃないでしょうか?