グレート・ムタ「感無量です」

1993年1月4日、新日本プロレスの東京ドーム大会で、グレート・ムタの持つIWGPヘビー級と 蝶野正洋の持つNWA世界ヘビー級。

この2つを賭けたダブルタイトル戦が行われました。

 

ムタは前年に長州力を破り 新世代としては、いち早くIWGP王者になり、一方の蝶野はG1を2連覇してNWAを獲得。

注目の一戦な上に、世界的な2大王座を賭けたダブルタイトル戦なのに、メインイベントじゃなかったのは、現代ではちょっと考えられないです。(メインは長州vs天龍)

 

試合順はともかくとして この試合に関しては勝手知ったる両者の対決だけに、予想通りの好勝負でした。 

初公開となるムタの花道ラリアット

G1を思わせる蝶野のパワーボム

いつも通りの攻防に加え 滅多に見せない攻撃もあり 時間が経つにつれペイントが剥がれていくムタの姿は、ほぼ武藤敬司でしたが、それ程の熱戦でした。

最後はダイビングショルダータックルをはたき落してから、速攻のムーンサルトプレス2連発でムタの勝利。

 

これで、ムタはペイントレスラーと言うギミックを持つ選手ながら 2つのベルトを手中に収め 新日本の頂点に君臨した事になります。

しかし それよりも印象的だったのは、試合後のバックステージでのムタのコメント。

 

感無量です!

 

ムタがコメントを出す事自体も異例ですが、あのムタがこんな喜びの言葉を出す事自体が、魔界の住人らしからぬ言動です。

(当時のムタに、魔界と言う概念は無かったけど)

普段は感情など表に出さないムタですが、NWAを獲得した事は、相当嬉しかったのでしょう。

それもその筈 海外修業時代に、ムタは米メジャー団体NWAで活躍し あっという間にトップグループに食い込むも何十回と挑戦しても最高峰のNWA世界ヘビー級だけは、とうとう手にする事が出来なかったので、遂に手にいれた王座を前に喜びも一際大きかったのでしょう。

欲を言うなら同じ日本人の蝶野じゃなくて、NWAで何度も辛酸をなめて来たフレアーからの王座奪取となったら、最もドラマティックでは有ったのですが、そこはしょうがないですかね。

 

常にキャラクターを大事にする武藤敬司ですが、この時ばかりは表情もコメントもムタではなく完全に”武藤敬司”でしたね。

NWA世界ヘビー級を獲ると言う事は、武藤にとって思わず キャラクターが崩壊しちゃう様な出来事だったんでしょう。

 

人間味溢れるムタを見たのは、この時が最初で最後でした。