プロレスにおいて拳を握っての攻撃や、顔面を殴る攻撃は基本的には反則です。
しかし不思議な事に、パンチが許されてしまう選手が居ます。
その代表格がアントニオ猪木や天龍源一郎でしょうか。
パンチは反則には違いありません。
しかし猪木のパンチは、実に絵になる反則なのです。
左手で相手の髪の毛を掴んで固定しつつ、大きく引いた右腕で勢いよく相手の額の辺りにストレートを叩き込む技。
相手の髪の毛を掴む場合もあれば、相手の顔面を直に押さえたり、または固定せずに左腕を突き出した体勢をとるだけの場合もあり、状況により多少形は異なる物のそのフォームが弓を引く体勢に似ている事から弓引きストレートと呼ばれる。
猪木の代名詞とも言える技で昭和プロレスの名シーンを思い起こせば、この技をしている猪木が思い浮かぶ人も多いんじゃないでしょうか。
厳密に言えばパンチはプロレスにおいて反則技ですが、時と場合によって許されたり許されなかったり この”曖昧さ”がプロレスの良い部分である事は事実なのですが、当時”絶対”とされていた猪木なので黙認されていた節があるのか、むしろ猪木がこの技を出すと拍手喝采ですからね。
と言うのも猪木は昭和を代表するヒーロー。
凶器などの反則攻撃で、ヒーローの猪木を痛ぶる悪役レスラーは、大袈裟でなく憎悪の対象になっていた時代です。
そんな場面で、猪木が弓引きストレートで「さぁ反撃開始だ!」となった時に、会場は最高に盛り上がる訳で、そこにプロレスならではのカタルシスがある訳です。
技を仕掛ける時の猪木の表情が、また良いんですよね。
最も”燃える闘魂”を感じさせる技だとも思っています。
娯楽の少なかった時代なので、リングの上で悪役レスラーをバッタバタとなぎ倒していく猪木の姿に、夢を見ていた人も多かったのでしょう。
勇気を貰った人も多かったでしょう。
非日常の世界であるプロレスが、日常の世界に大きく関わっていた時代だからこそ 猪木のファイトに多くの人が一喜一憂して、反撃の狼煙の弓引きストレートに対してファンは、全身全霊を込めて声援を送り 拍手したのです。
厳密に言えば反則技には違いないです
しかし ここまで勇気を与える反則技は、プロレス界広しと言えども他に例が無いんじゃないでしょうか?