10年の歴史の果てに勝者は中嶋!次はあるのか?

「プロレスとは人生の縮図」と誰かが言っていましたが、プロレスは、純粋な技と力のぶつかり合いだけではなく、対戦相手同士が、リング上でこれまでの生き様や歴史を見せつけぶつけ合うもの。

リングに立つ者どうしに、ドラマや歴史が有れば有る程 様々な観点から試合を観る事ができて深みも増していきます。

それがプロレス。

 

そんな歴史とドラマを持った試合が、ノアと全日本の対抗戦の流れから、7月15日にノアの後楽園大会で実現した中嶋勝彦vs宮原健斗の一戦でした。

 

中嶋勝彦35歳 デビュー2004年1月

宮原健斗34歳 デビュー2008年2月

2人は年齢差は一歳ですが、4年ものキャリアの差があり、本来なら若手時代に凌ぎを削っていたとしてもおかしくはない年齢差。

 

しかし中嶋は天才空手少年として、WJで長州力に才能を見いだされ15歳でプロレス界入り、団体崩壊後は佐々木健介に師事して、健介オフィスの一員として全日本を主戦場に、みるみる頭角を現します。

気がついてみればキャリア僅か三年で、世界ジュニアヘビー級を獲得し、全日本Jr.の第一線でバリバリやっていたのだから、その才能は恐るべしです。

 

その1年後に、宮原は健介オフィスに入門して来た訳で、年齢差は一歳とはいえ 宮原が入門した時点で、既に中嶋はメジャー団体の王者にもなっていたのだから、宮原にとって中嶋は雲の上の存在だったとも言えるでしょう。

その立場の違いもあってか中嶋の方は、特に強く宮原の事を意識した事はなかったそうですが、宮原からすれば全くの逆。

「健介オフィスのNo.2は中嶋」という概念はすっかり出来上がっていたし、日々成長を続けていたとはいえ弟弟子が、このイメージを覆すのは容易な事ではありません。

 

そもそも「明るく楽しく激しいプロレス」を信条としていた宮原からすれば「激しい」部分に焦点を合わせた中嶋のプロレス観は、受け入れ難かったと言います。

まぁ そこいらは個人の感性による所なので、どちらが正しいとかは言えませんが、2013年に宮原の退団により2人は袂を分かつ事になります。

 

宮原は全日本

中嶋はノア

ダイヤモンドリング(健介オフィス)解散後は、それぞれがメジャー団体の所属となり全く別の道を歩くのですが、意外にも団体最高峰の王座を獲得したのは、弟弟子である宮原が先でした。

宮原の3冠ヘビー級奪取2016年2月

中嶋のGHCヘビー級奪取2016年10月

 

数ヵ月の差ながらもかつての弟弟子に先を越された兄弟子には、思う所もあったでしょう。

先輩後輩だからこそ、2人の間には、2人にしか分からない感情があったと思いますが、2人が袂が分かってから気がついてみたら10年もの月日が流れていました。

 

そして運命は、リング上で2人を引き合わせ 決戦の場となる後楽園ホール大会では、禁断の対決を見る為に集まった、立ち見席も完売の1515人の観衆の元で、遂に10年半ぶりとなる中嶋vs宮原のシングルマッチが行なわれました! 
 
まるで お互いの10年間をぶつけ合うかのように激しい試合が展開されましたが、最後にリング上に立っていたのは兄弟子である中嶋勝彦。

最後は必殺のバーティカルスパイクで、問答無用の3カウントを奪った中嶋には、兄弟子である意地が見えた様な気もしますし、先に団体最高峰を手にしたかつての弟弟子へのジェラシーも有った様な気もします。

 

試合を終えた中嶋は、宮原の肩に手を添えて称えるも、宮原はこれを振り払い拒絶し、試合は終わっているのにも関わらず激しいエルボーの打ち合いに。

中嶋には先輩の意地もあったのでしょうが、後輩の宮原にも当然意地があります。

良いですね。 この先輩後輩の関係を越え、団体の壁をも越えたライバル関係。

 

マイクを持った中嶋は「健斗、最高なレスラーになったな。でも、オレは譲れねえよ! 今日はこんなに超満員の後楽園で、宮原健斗と10年ぶりに会話できた。そしてそれを会場で見届けてくれたファンのみんな、ありがとう」と来てくれたお客さんに感謝の言葉と宮原への賛辞、そして一人のプロレスラーとしての意地も 中嶋のコメントには垣間見られました。

 

団体闘争ではなく個人闘争の意味合いが強いこの一戦でしたが、それでも宮原が全日本のエースである以上は、この敗戦は意味を持ってきます。

このまま敗けっぱなしで、引き下がる訳にはいかないでしょうね。

 

バックステージでは「10年ぶりに中嶋勝彦の肌に触れたよ。結果はオレの負けだ。何も言い訳はできねえ。今この人類の中で1番借りを作りたくない男に借りを作っちまった

宮原のこのコメントからも悔しさは、物凄く伝わってきます。

 

両者共に次がある事を示唆していたし、再び期が熟すれば再戦は必ず訪れるでしょう。

乱発は良くないですが、宮原にも一回はリベンジのチャンスを与えるべきなので、すぐにとは言わなくても2戦目は早く実現して欲しいです。

それにしても この一戦は両者が積み重ねてきた歴史や、隠す事のない感情、そして激しい試合に「次」を感じさせる展開と2人の歴史が詰まった「正にプロレスといえるプロレス」でした。

 

中嶋勝彦vs宮原健斗

遅かれ早かれ再戦の時は、必ずやってきます。

 

そして きっと、どこかでこの試合を観ていたであろう 2人の師匠である佐々木健介や北斗晶は、成長した2人のぶつかり合いを観て 何を思ったんでしょうか?

是非どこかで、おふたりのコメントとかが有れば見てみたいですね。