現在は引退していますが、2000年代後半に新日Jr.のトップの一角に登り詰める活躍をみせていた井上亘は、大好きなレスラーの一人でした。
井上を好きだった理由は、その誰からも好かれる人間性や 愚直なまでの一直線ファイトもそうですが、大きな理由の一つとして 井上が若手時代から使用していた 代名詞でもあるトライアングルランサーが、大好きな技だった事もあります。
井上が付き人を努めていた佐々木健介の得意技ストラングルホールドγに、独自の改良を加えて編み出したのが、トライアングルランサーなのですが、これがまた中々の完成度で一貫して使い続けていた所に、井上の拘りを感じさせました。
しかしレベルの高い新日Jr.で、ヤングライオンと呼ばれる時期は卒業しても 井上はなかなか結果を出せずに苦しむ期間も続き、頼みの綱のトライアングルランサーもなかなか決め手にはなりません。
その間にスタガリンブロー等の違う必殺技も開発はしていましたが、そう簡単に結果が付いてくる訳ではありませんでした。
2007年に、ベストオブ・ザ・スーパーJr.、IWGPJr.ヘビー級選手権など良い所までは行く物のどうしても栄冠を掴み取る事が出来ず、連敗続きだった井上は、自信を失ってしまい失意の中 音信不通となってしまった事がありました。
あの真面目を絵に描いた様な井上が、こんな行動を起こすなんて、余程追い詰められていたんだと思いますが、一度は自暴自棄になっても井上は、最後まで諦めてはいませんでした。
こんな時に最も頼りになるのは、やはり自分が最も得意としている技と言う事で、自らの代名詞ともいえる、トライアングルランサーに更なる磨きをかけて 更なる改良を加えます。
仰向けの相手に、インディアンデスロックの要領で右足で相手の両足を固め、左足は膝を着きながら相手の首の下に引っ掛けて、左腕も両手で掴んで動きを封じる事で、首と足を同時に極める身動き不可能な変形のトライアングルアンサー。
それがファイナルランサーです。
元々トライアングルランサーは、下半身を使って逃げられる事が多く、トップ選手からギブアップを奪える事は決して多くは有りませんでしたが、両足も固める事で、本人いわく「絶対に逃げられないトライアングルランサー」となった。
確かに両足を固められた状態で、首も極められていては相手はただ耐えるしかありませんからね。 考えてみると拷問のような技です。
現に失踪後の数カ月に戻ってきた復帰戦では、ノンタイトルながら時のIWGPJr.王者の田口隆祐から完璧なギブアップを奪い、その変貌ぶりと新技の威力を見せつけています。
この時点では、これと言った技名は無く”変形トライアングルランサー”と呼ばれていました。
翌年の2008年のスーパーJr.では、決勝戦で師弟関係にあった金本浩二をもこの変形トライアングルランサーで撃破して、悲願の初優勝。
この技は、井上が滅多に出す事の無い 正しくとっておきの奥の手でした。
2009年になってようやく「この技で必ず試合を終わらせる」と言う意味で、正式にファイナルランサーと命名されたのですが、技名を付けるなら開発した時に、一緒に考えるべきだったのに、ちょっと命名するの遅すぎでしたね。
ちなみにトライアングルランサーは大好きな技でしたけど、ファイナルランサーは余り好きな技では有りません。
説得力はあるんですけど、あちこちガチャガチャ固め過ぎているので、見栄え的にも技の入り方的にもトライアングルランサーの方が美しいんですよね。 そこいらがプロレス技の難しい所で説得力を追求し過ぎるとプロレスならではの技の美しさも損なわれてしまいますから。
まぁ そこは見る人によって感じ方もそれぞれでしょうけど。