蝶野正洋のダイビングショルダーアタック

コーナー最上段からダイブして 立っている相手に肩口からぶつかっていく単純明快な技。

ダイビングショルダーアタック

 

これだけ単純で、誰にでも出来そうな技なのに、意外にも誰も使わない技 ダイビングショルダーアタック。

簡単過ぎるからこそ逆に誰も使わなかったのかも知れませんが、日本人選手で代表的な使い手と言えば、蝶野正洋がパッと思い浮かびます。

いや むしろ蝶野しか思い浮かびません。

 

186cmの長身の蝶野が使用するからこそ、非常に絵になっていたし この技の第一人者だけあって フォームも美しく蝶野は正しくダイビングショルダーアタックの名手だったと思います。

白の頃の蝶野のイメージです。

蝶野を代表する繋ぎ技の一つなのですが、単純かつ動きの少ない技ゆえに見切られる事も多く、ハタキ落とされる事もしばしば。

そこから相手の反撃の起点にされてしまう事も多いので、相手としても試合を組み立てる上では、重要な技だと言えるかも知れません。

 

現代プロレスにおいて、それほど派手な技でもありませんが、クラシックなレスリングを好む蝶野の持ち技の中では、充分に派手な部類の大技となり、そんなダイビングショルダーアタックの最も印象に残っている場面と言えば、やはり1992年のG1クライマックスでしょう。

この時の蝶野は、前年の初開催となったG1クライマックスで大方の予想を覆しての優勝を果たしているだけに、2年連続での優勝は幾らなんでも無いだろう・・・と言うのが大半の予想だったと思います。

 

しかし蓋を開けてみれば、トニー・ホーム、スコット・ノートン、武藤敬司と次々に強豪を撃破しての堂々の決勝進出。

対するは、これまた全くのノーマークだったWCWからの刺客リック・ルード。

 

ルードはあのキャラクターに惑わされがちですが、あれでかなりの実力者なので、ここで蝶野に勝てるだけの実力は充分にもっています。

しかし流石に新日本のNo.1を決めるG1クライマックスで、ルードに優勝をされてしまったのでは新日本としては立場が無いし、威信にも関わります。

会場に居る全ての新日本ファンの後押しを受けて蝶野はリングに立ちました。

蝶野のキャリアの中でも3本の指に入る位、最も会場が一丸となって蝶野を応援していた試合じゃないでしょうか?

 

とは言ってもルードも世界の強豪。 その巧みなインサイドワークとレスリングテクニックの前に、首に爆弾を抱えている蝶野は、徐々に窮地に追い込まれて行きます。

しかし勝負を諦めなかった蝶野は、一瞬の隙をついて狙い澄ましたダイビングショルダーアタック一閃!!

 

まさかの技で、ルードを押さえ込み 見事なG1クライマックス2連覇を達成すると同時に、NWA世界王者にまで輝いてしまったのです。

応援していたとはいえ、G1連覇と言う偉業には驚きでしたが、最後にダイビングショルダーアタックを狙って来た事にも大きな驚きがありました。

これまで単なる繋ぎ技だった技を 誰もが予想しない形でフィニッシュとしましたが、これはこれで良かったと思います。

 

爆弾を抱えている首を徹底的に狙われ、絶体絶命にまで追い込まれた蝶野が一瞬の隙を見逃さずに放った起死回生の一撃で、奇跡の大逆転勝利と言う感じが出ていたので、最高に盛りあがったし、武藤ファンだった自分もこの時ばかりは、蝶野に痺れました。

固定の必殺技と言うのも良いですが、その状況に応じての意外なフィニッシュホールドと言うのもLIVEで観る分には、興奮する要素の一つですね。

 

この時以降はフィニッシュとなる事もなく 再び繋ぎ技としての使用に留まり、蝶野も徐々にコンディションが悪化していくに従って、いつしか ダイビングショルダーアタック を使用する事すらも無くなってしまいましたが、やっぱり未だに「G1を制した蝶野の大技」と言う印象は残っています。