ノド輪落としには、誰よりも強い拘りを持つ田上明ですが、数あるバリエーションの中でも断崖式や雪崩式を除けば、最強の破壊力を誇るのは、秩父セメントでしょう。
2004年に小橋健太の持つGHCヘビー級に、
挑戦が決まった際に考案。
ブレーンバスターの体勢で垂直になるまで抱えあげて、そこからクラッチを変えて、相手の喉を鷲掴みにすると、真っ逆さまに叩きつける変形の喉輪落とし。
もともと何気ないブレーンバスターでも長身の田上がやれば、それだけでも強烈なのに更に喉輪落としで真っ逆さまに落とされるのだから、その破壊力は他の喉輪落としの比では無いでしょう。
まず角度が違います。
他の喉輪落としは、ほぼ水平に落とされるので受け身は取りやすいのですが、秩父セメントに関しては、喉を捕まれる時点で、既に真っ逆さまなので、かなり危険な角度で叩きつけられる事になります。
受け身の得意なNOAHのトップ勢と言え、あんな角度で落ちるのでは、受け身も糞もないので破壊力に関しては断トツでしょう。
「受け身の取れない技は好きじゃない」と田上本人も言っていた様に、田上はこれまで危険な角度の投げ技は、一切使用した事はありません。
しかし絶対王者の小橋を倒しGHCを獲る為には、己の美学すらも破壊する必要があったのでしょう。
それ程 当時の小橋は穴の無い 絶対王者でした。
結局 秩父セメントを持ってしても小橋からは3カウントは奪えず、ベルト奪回には失敗してしまい 秩父セメントはこれ以降見る事はなくなってしまいました。
タイガードライバー91
バーニングハンマー
三冠パワーボム
かつて四天王と呼ばれた他の三人は、過激化する闘いの中で、受け身の取れない危険技を繰り出す必要に迫られていましたが、田上だけは頑なに危険技を拒否して 自分の美学を貫いていました。
そんな田上が、秩父セメントを繰り出したのは、例え自分の美学に反してでも 小橋建太と言う絶対王者を何としても倒したかったからなんでしょうね。
田上が長いキャリアの中で、自分の美学に反したのは後にも先にも この一度だけでした。
ちなみに、秩父セメントの名前の由来は、田上の出身地の埼玉県の秩父市から取られたのだが、実はまだ「オレが田上」の技名が未定だった頃に、三沢光晴が命名してボツになった案である。
数年の時を経て新技が開発され 名前に困った田上が、過去のボツ案を引っ張り出してきたと言う訳。
よっぽどネタに困ってたんですかね。