獣神サンダー・ライガーの浴びせ蹴り

プロレスにおける浴びせ蹴りと言えば、燃える闘魂アントニオ猪木がここ一番の奇襲攻撃で見せる浴びせ蹴りも有名だったと思いますが、個人的には何と言っても獣神サンダー・ライガーが一番です。

 

元々は骨法の技術で、前転しながら振り上げた踵を相手に叩き込む危険な蹴り技で、猪木もライガーも骨法修業の際に会得した技である。

晩年のライガーは、浴びせ蹴りの使用頻度は随分と減ってしまいましたが、1990年代は頻繁に有効的に使用しており、対戦相手からはかなり警戒される破壊力とキレを誇っていた技でした。


と言うのも1989年の「夢☆勝ちます」と言う、当時は定期的に開催されていた若手レスラーが、先輩選手に挑むシリーズで、ライガーと対戦した当時デビュー2ヶ月の三澤威が、試合開始早々に浴びせ蹴りをモロに顔面に浴びてしまい、頸椎損傷による長期欠場に追い込まれてしまった いわくつきの技なのです。

寝たきり状態にまでなった三澤は、プロレスを諦める事が出来ずに、その後どうにか復帰にこぎつけた物の完治には至らず 結局は引退してしまい3年間の現役生活に幕を閉じている。

 

アクシデントとは言え 浴びせ蹴りの危険性を強烈に印象付けるエピソードですが、怪我をした三澤も当時は、プロレスを諦めざるを得ない状況に陥った事で

「違う相手なら良かった」

とネガティブな感情を抱く事もあったそうです。

現在では資格を取得して新たな道に進み 接骨院を開業して、新日本のメディカルトレーナーとしても活躍しているので、今となってはライガーとも談笑できる位に、両者の間には何のわだかまりも無いようです。

 

ライガーの浴びせ蹴りが、一人の若きレスラーの選手生命を奪ってしまったのは事実とは言え、故意にやったのであれば話は別ですが、あれは完全にアクシデントなんで、当時はライガーにしても三澤にしても相当辛かったと思います。

何気なしにやっている技の一つ一つが、全て危険と隣り合わせと言う事ですね。

この事故以来ライガーの浴びせ蹴りも 若干緩くなっている様な気がしましたが、これは致し方ないでしょう。

 

緩くなったとは言っても浴びせ蹴りは、やはり強烈な技なので、相手からすれば要注意なのは変わらないので、ライガーのライバルだった佐野直樹なんかは、攻略法として編み出したのが、浴びせ蹴りのタイミングに合わせて 自ずからうつ伏せに倒れ込んで浴びせ蹴りを無効化するという物でした。

余り格好良いディフェンスでは無いかも知れませんが、これは実に効果的。

見栄えするディフェンスよりも 確実にダメージを抑えるディフェンスと言う意味では、完璧なディフェンス法だったかも知れません。

当時のライガーのキレキレの浴びせ蹴りを瞬時に、倒れ込んで回避する佐野の反射神経も特筆すべきですけどね。

 

90年代後半になると、コーナーに詰めた相手に対しては、掌低を打ち込んでいましたが、そのパターンが確立する90年代前半は、串刺し式の浴びせ蹴りを多用していました。

しかし あれはエグかった。

 

ライガーの技の中でも危険度の高い技で、実戦向けの技と言う触れ込みだったのに、2002年のパンクラス総合ルールで行った鈴木みのるとの一戦では、あっさりと浴びせ蹴りをスカされ そこからマウントポジションを取られてしまい、敗戦に繋がってしまったのを目の当たりにした時は、少なからずショックでした。

当のライガーは浴びせ蹴りや骨法の技術の問題ではなく、あくまで自分の使うタイミングの問題だった事を強調していましたが、まぁ言われてみればその通りですね。

あれ程の大振りの技を闇雲に打っても 実戦でヒットしないのは、しょうがない事です。

 

しかし 17年後の鈴木との約束の再戦では、今度こそと浴びせ蹴りをヒットさせています。

プロレスルールですけど。

試合には負けましたが、浴びせ蹴りをヒットさせると言うリベンジに関しては、しっかりと果たしています。