中邑真輔のランドスライド

中邑真輔は若くしてIWGPヘビー級の王者になったが為に、下積み経験はほぼ無い物の 苦悩の日々が長く続いたレスラーでした。

そんな時代の中邑を象徴する技の一つが、ランドスライドだと思います。

 

2006年に時のIWGP王者ブロック・レスナーに、それまで培ってきた格闘技の技術を駆使して挑むも、完敗を喫してしまった失意の中邑は「レスナーを倒す実力を身に付ける」と天下取りを達成すべく海外遠征に旅立ちます。

若手時代に短期のサーキットはあっても無期限の海外遠征は、これが初となる中邑でしたが、当時は大々的に明かされてこそいませんでしたが、何と海外では一度も試合をする事無く LA道場でひたすら汗を流す日々。

 

約半年後に中邑は凱旋を果たす事になるのですが、以前の細身だった中邑からは想像出来ない程に、バンプアップされたヘビー級の肉体と供に「垂直落下式のファイヤーマンズキャリー」と言う触れ込みの新必殺技.ランドスライドの存在を仄めかしていました。

 

垂直落下式のファイヤーマンズキャリーと言うと

「デスバレーボムみたいな感じなのかな?」

「そもそもメディアのミスで、ラストライドの誤植か?」

とか色々想像したのですが、実際の中邑の凱旋試合でフィニッシュになったその技を観てみるとファイアーマンズキャリーの要領で、両肩の上に相手を担ぎ開脚ジャンプを加えながら、相手を前方へ滑らせるように背中から叩き付ける技で、形としてはハリケーンドライバー等に近いです。

 

これまでの中邑は、細身でスマートなイメージでしたが、肉体改造に成功して凱旋して来た新生・中邑の新必殺技としては、インパクト充分なパワー殺法でした。

凱旋試合で長州力からも初フォールを奪ったのを皮切りに、G1タッグリーグやIWGPヘビー級選手権などで、中邑はランドスライドでフォールの山を築きまくります。

 

しかし時代が暗黒期だった事もあり 新日本に対しても その中心選手の中邑に対してもバッシングの声は多く 一部では、ランドスライドを「えびす落としじゃん」と何だかんだ文句を言う人も多くみられました。

 

えびす落としちゃうわ!

せめてハリケーンドライバーか、太陽ケアのTKOって言ってくれ!!

そもそも えべっさんじゃないから!!!

 

迷走をしているとも言われました。

ファイトスタイルが大きく変わった中邑には、バッシングは確かにありましたが、この時の試行錯誤の末に、クネクネを開眼した事を考えると仮に迷走だったとしても 決して無駄な事では無かったと思います。

当初の標的だったレスナーは、中邑の海外遠征中に新日本から姿を消していたのは、皮肉な話ですが、仮にレスナーとの再戦が実現していたとして レスナーにランドスライドを決めれるのか……となったら正直難しかったでしょうね。

結局クネクネになって ボマイェの開発以降は、ランドスライドは封印される事になるのですが、2013年の桜庭和志とのIWGPインターコンチネンタル戦で、カウンターでランドスライドを解禁した時はウォォォォォォッ!って感じでした(笑)

 

格闘技色の強い桜庭に、封印していた筈のプロレス色が強いランドスライドを繰り出して形勢逆転をする所が、最高の流れでした。

数年間の封印を敢えて桜庭戦で解いたと言う事が、結果的に大きな興奮となった訳で「ランドスライド封印」が全て この日に繋がっていた事を考えると、やはりプロレスはどこでどうなるか分かりません。

 

暗黒時代に迷走の末に生み出された技ですが、中邑真輔の歴史には切っても切り離せない 大事な技の一つだと思います。