武藤王座陥落!しかし見せつけた生き様

6月6日に行われた サイバーファイトフェスティバル2021のメインイベントであるGHCヘビー級選手権

王者・武藤敬司vs丸藤正道

 

武藤は潮崎豪から王座を奪い これまで清宮海斗とマサ北宮を退け2度の防衛を果たした事で、長期政権となる予感が漂っていましたが、ここにきて挑戦して来たのが、武藤とはエムズアライアンス同門であり NOAHの象徴である丸藤。

タイトル戦で無くとも世代を越えた天才対決と言うだけでも注目だったのに、NOAHの至宝を掛けた一戦というのだから興味は尽きません。

 

結果から言うと丸藤が、この日の為に編み出した新技 虎王・零を叩き込んで武藤からフォールを奪い 実に5年半ぶりとなるGHCヘビー級王者となりました。

武藤の王座陥落は、過去の武藤政権に比べたら 意外にも早かった印象ですが、試合に関しては武藤がほぼ流れを掴んでいたのに、ここでベルトを失った事実に関しては、素直に丸藤が見事だったと言う他ないでしょう。

 

しかし 武藤が負けてしまった原因の一つとしては、武藤自身にありました。

この日はNOAH・・・と言うかサイバーグループにとっては、グループの勢力を見せつける大一番の合同興業。

その中心団体であるNOAHの王者・武藤としては、勝利してベルトを守るのは勿論 絶大なインパクトをも見せると言う義務が有りました。

その状況で武藤が、試合終盤に繰り出したのは、まさかまさかの生涯封印した筈のムーンサルトプレス!!

 

武藤の両膝に入っている人工間接は、衝撃に弱い為にムーンサルトプレスの衝撃には耐えれない可能性があり、医者からも絶対にムーンサルトプレスをやってはいけないと言われている筈です。

下手すると今度こそ本当に歩けなくなる可能性もあるので、まさか武藤が58歳にして両膝を犠牲にしてまで、ムーンサルトプレスをやる事は、流石に無いだろうと思っていました。

 

しかし 武藤は飛びました。

シュミット流バックブリーカーで、丸藤を叩きつけると 場内の「まさか!?」と言う空気の中 武藤はコーナーに上がると迷う事なくムーンサルトプレスを放ったのです!

これには、衝撃を受けました。

まさか自分の両膝を犠牲にしてまで ムーンサルトプレスを出してくるとは…

 

一度はラストムーンサルトを誓った物の やはり武藤の性分としては、あのサイバーグループ系の最高の大舞台で、飛ばずにいられなかったのでしょう。

 

結果として完璧にヒットしたムーンサルトプレスも丸藤が、意地でカウント2でハネ返し 逆に自身の膝に大ダメージを追った武藤は、そこからガクッと動きが落ちてしまい 丸藤に一気に畳み込まれ敗戦となってしまいました。

あそこで、ムーンサルトを出さなければ負ける事は、無かったかも知れません。

手堅く足4の字固めで、勝負に出ていれば勝てたかも知れません。

二度と歩けなくなるリスクを犯してまで、飛ぶ必要は正直なかったかも知れません。

 

しかし武藤のプロレス人生は、ムーンサルトプレスと共に歩んできた物。

これまでの自分の歴史や王者の責任感を考えた時に、武藤からすれば、あそこで飛ばないと言う選択肢は、1mmも無かったのでしょう。

 

「足くらいプロレスにくれてやる」

かつて武藤が言ったこの言葉は、大袈裟でも何でも無く 武藤は自分の両足をプロレスに捧げる本物の覚悟を見せてくれました。

勿論 武藤ファンとしてムーンサルトプレスを見れた事は嬉しいですが、同時に武藤ファンとして そこまでして欲しいとは思っていません。

 

だからこそ武藤の足が心配だし 複雑な気分なんですが、例え武藤は王座からは陥落しても、自分の生き様をリングで見せつけたと思います。

 

ここで封印を解いた事で、現在の武藤の両膝がどんな状態になってしまったのかは、今の所わかりません。

しかし歓声が禁止されている今大会で、歓声が上がり 最大の盛り上がりを見せたのは間違いなく武藤が、ムーンサルトプレスを出した場面だったし 武藤に一切の後悔は無いと思います。

 

それこそ武藤の言う最高の「作品」を作り上げたのですから。

今更ですが、武藤は正しく本物のプロレスラーです。

 

ただ今回ムーンサルトプレスを解禁した事で、膝が壊れていない事を祈るばかりです。