プロレス界でも最高の必殺技ウェスタンラリアット。
それを振るうスタン・ハンセンの左腕が、世界一の左腕と異名を持つ事について異論のある人は居ないでしょう。
そのハンセンをして「世界一の右腕」と言わしめたのが三沢光晴の右腕です。
1993年5月に三冠王者・三沢が、スタン・ハンセンを挑戦者として迎えた一戦。
前年に一度だけ三沢は、ハンセンから勝利を挙げた事は有る物の 全体的な勝率は圧倒的に悪く 三沢を始めとした四天王達は、数え切れない程ウェスタンラリアットの前に、辛酸をなめて来ました。
喰らえば終わりの一撃必殺のウェスタンラリアットを抜きにしても ハンセンは強豪中の強豪。そう簡単に勝てる相手ではありません。
ましてやハンセンの巨体とパワーを前にしては、持ち上げる類の技は易々と決めれる物では無く 現に三沢はハンセンと何度も闘いながらも タイガードライバーやタイガースープレックスと言った大技を成功させた事は、一度も有りませんでした。
となると活路を見出すには、やはり絞め技や打撃技が有効になって来るのですが、少なくともトップ選手になってからの ハンセンは、ギブアップ負けは一度も無い筈。
得意のフェースロックが完全に極まっても やはり勝利には結び付かないので、こうなると三沢の打倒ハンセンの切り札となるのは、前年にも勝利を挙げた事のあるエルボーしか無かったのでしょう。
そして激闘の末 三沢は2度目となるハンセン越えを果たしました。
フィニッシュとなったのは、ハンセンのフロントキックをキャッチしての遠心力を利用したローリングエルボー!
三沢もダメージからか、フォールに行くまでの時間が結構あったにも関わらず ハンセンは完全にKO状態となってしまっていたので、3カウントを献上してしまいました。
前回もエルボーで敗れている物の一度位の負けでは「まぐれ」とも言えますが、2度目のエルボーによる敗戦に、ハンセンは潔く負けを認め これまで格下だった三沢を もはや自分と同格と認めこう言ったのです。
「オレは世界一の左腕の持ち主だが、ミサワは世界一の右腕の持ち主だ」
これは、三沢に対する最大級の賛辞ですね。
打撃一発で、完全にKOされた上でフォール負けと言うのは、ハンセンからすれば悔しくない筈がありません。
黄金の左腕を持つ男が、「右腕」にとは言え自分と同等の異名を与えたのだから 本当に三沢のエルボーの威力と 三沢自身の成長を認めたからこそ こんな発言が出て来たんだと思います。
世界トップクラスの選手でありながら 年齢もキャリアも実績も 自分よりも遥か下の若者を好敵手と認めたハンセンの器にも感服ですが、あのハンセンを認めさせた三沢もさすがです。
この時点でも充分に凄かった三沢のエルボーですが、ここから更に必殺のエルボーに磨きをかけ 多くの修羅場を潜り抜ける事で、業界でも屈指のエルボーの使い手に成長して言った所を見ると やはりハンセンの目に狂いは無かったのですね。
負けて 相手の事を素直に認める事の出来るハンセン
カッコ良いです。