武藤敬司のスペースローリングエルボー

赤タイツ時代の武藤敬司と言えば、躍動感溢れる抜群の身体能力と圧倒的なまでの天性の華。これに尽きると思います。

躍動感に満ちた当時の武藤を象徴する技と言えば ムーンサルトプレス、フランケンシュタイナー そしてスペースローリングエルボーじゃないでしょうか?

側転エルボーと呼ぶ人も居ますが、辻よしなりアナが実況の中で名付けた「スペースローリングエルボー」と言うネーミングが、やはりしっくり来ます。

 

初代タイガーや飯伏幸太 ハヤブサなど凄まじい身体能力を持ったレスラーは、日本マットの歴史上 多く存在しますが、188cmの体格であれだけの躍動感を表現できる選手は、そうそう居ないでしょう。

スペースローリングエルボーは、武藤が「天才」と呼ばれるのを最も実感できる技だと思います。

 

あの華麗な動きを あの巨体で軽々とやってのけるのだから武藤は、本当に身体能力の塊なんでしょう。 ジャンプが高過ぎるせいで、勢い余ってエルボーを当てると同時に、自分が場外まで落ちるなんて事もたまにありましたからね。

 

プロレスに理解の無い人が見れば、全く意味の無い無駄な動きに見えるんでしょうが、プロレスに理解ある人が見れば、華麗さと威力を兼ね備えたプロレスらしい素晴らしい技に見えるのが面白い所。

もしかしたら「威力」と言う所に、疑問を持った人も居るかも知れませんが、武藤があの巨体で、スピードの乗った側転で勢いを付けながら 全身から突っ込んでくるんだから冷静に考えたら痛くない筈が無いんです。

実際に顔面に受けた長州力が、そのままコーナーに崩れ落ちてKO寸前になった事もありますからね。 見た目が余りにも華麗なので、威力がある技には見えないのは、分かりますけど。

 

ここからフェースクラッシャーに繋ぐ連携も素晴らしかったと思いますが、そこはドラゴンスクリューから足4の字固め同様に、技と技を繋ぐセンスがズバ抜けている武藤ならではなんでしょう。

 

90年代前半は、武藤の試合ならば必ず見られたお決まりのムーヴでしたが、膝の悪化に伴い手術を重ねる度に、徐々に使用頻度は減っていき 2000年代に入ってからは、ほぼ使用される事もなくなってしまいました。

しかし2021年になって まさかのGHCヘビー級王者になりNOAH所属となると 残された時間は僅かだから今までの引き出しを全て出そうと考えたのか、まさかまさかの久々のスペースローリングエルボー!

しかし今の膝の状態では、この技を成功させるのは、厳しかったのか側転を着地してから エルボーに繋ぐ事は、残念ながら出来ませんでした。

 

ただ全盛期の半分程もないコンディションで、スペースローリングエルボーにチャレンジしようとした武藤の心意気には、感動しました。

どんなに年を重ね キャリアを重ねても武藤のプロレスLOVEが薄まる事は無いのをまざまざと見せつけられた様な瞬間でしたね。