佐々木健介「太く短くいきます」

海外修行からの凱旋と言えば 長い修行で生まれ変わった自分を見せつける その選手にとっては、一大イベント。

帰国の挨拶や凱旋試合のインパクト如何で、今後のイメージを固定してしまうと言っても過言ではありません。

 

そんな状況で不運だったのは、瞬く間にスターに登り詰めてしまったオカダ・カズチカと同時凱旋だったせいで、すっかり影に隠れてしまったYOSHI-HASHIが有名な所。

凱旋試合は凡戦でしたが、その後の活躍で難なく評価をひっくり返すような怪物オカダと比べられてしまっては、YOSHI-HASHIも可愛そうな気はするんですけどね。

 

同じ様な事例は、1990年にもありました。

若手時代から将来を嘱望され 早い段階で海外遠征に旅立ちWCWでもトップを張り 会社の期待を一身に背負いながら凱旋を果たした天才・武藤敬司。

その武藤と同時凱旋だったのが、一介の若手選手だった佐々木健介でした。

 

同時凱旋となると 嫌がおうにもどうしても比べられてしまいます。

身体能力 ルックス 体格 海外での実績 ファンや会社の期待値

全ての面に置いて武藤は、健介の上を行っており、気の毒になる位 健介は完全に武藤の刺身のツマでした

 

凱旋試合も武藤は、メインイベントでいきなりの橋本真也&マサ斉藤のIWGPタッグ挑戦に対して 健介は、後藤達俊&ヒロ斉藤との普通のタッグマッチ。

明らかに、扱いが違いました。

それでも健介は、この時から既に打倒・闘魂三銃士を掲げていて 胸に秘めたる物は相当な物があったのでしょう。この時の悔しさをバネに、数年間 闘魂三銃士の背中を追い続けて行く事になります。

 

凱旋帰国の挨拶が、また印象的でした。

ビシッとスーツでキメた武藤にたいして Tシャツ姿で、リングに立つ健介の姿は、天才と呼ばれエリート街道を歩いてきた武藤と 雑草から生き抜いてきた健介を象徴するようでした。

「プロレスラーの正装は、鍛え上げた肉体」と言う様に、プロレスラーらしく正にその言葉を体現していた所が、健介らしいですね。

 

太く短くいきます

 

凱旋の挨拶が、これまた健介らしい。

何なとくのらりくらりと長くキャリアを重ねて行くよりも 短い期間でも全力疾走で駆け抜けようと言う武骨な健介らしい生き方です。

 

その言葉通り 健介は2014年に、突如としてリングを降ります。

年月にしては、凱旋から24年も経っていますが、当時の健介は47歳。

それ程大きな爆弾を抱えている訳でもないプロレスラーとしては、比較的早い段階での引退。

 

「太く短くいきます」と言った様に、ノラリクラリとキャリアを重ねる事はせずに、フリーとなりながらも全力で走り続けた健介は、業界初となるメジャー三団体グランドスラムも達成しています。

最近では武藤が、グランドスラムを達成した事で話題になっていますが、それよりも13年も前に健介はグランドスラムを達成しているし、新日本時代には武藤を相手にIWGP防衛を果たした事もあります。

 

かつて武藤の添え物の様に扱われた男は、決して諦めない心と絶え間ない努力をもって、全力で駆け抜ける事で、武藤に勝るとも劣らない実績を残しています。

キャリア終盤には、NOAHを主戦上にしており バリバリの若い選手達と激闘を繰り広げなから GHCヘビー級を獲得したのだから大したものです。

 

そんな健介も2014年に、弟子の中嶋勝彦に破れた事で、踏ん切りがついたのか、自分の役目は終わったと判断したのか、自らのプロレス人生に幕を引きました。

引退試合もセレモニーも無く 健介クラスのレスラーが突然の引退だったのは、寂しかったですが、これもまた健介らしかったんじゃないでしょうか?

 

太く短くいきます

正にそんなプロレスラー人生だったと思います。