つい先日 柴田勝頼が新日本プロレスを退団して、AEWと契約した事が報じられましたが、選手のコンディションと会社側の試合出場の要請など、いくつかの要因が互いにすれ違った末の結果です。
柴田の件は、どちらかが不義理をしたわけでも喧嘩別れしたでもありません。
柴田は、2017年に急性硬膜下血腫に倒れ長期欠場を続けていましたが、2022年に復帰。
その後 柴田はエキシビジョンではなく「試合をしたい」と要求していましたが、新日本としては柴田の負傷箇所が箇所だけに、万が一の事を想定して どうしても慎重にならざるを得ず、柴田の意思に反して試合が組まれる事は殆んどありませんでした。
日本で試合が出来ない柴田は、AEWでスポット参戦を果たしていた中で、今回の移籍。
これは選手の安全を第一に考えた新日本の対応と「大丈夫」と主張する柴田の意見が食い違ったただけで、どちらが悪いわけでもありません。
新日本の対応は会社として当然。
柴田もレスラーなら試合をしたいのは当然。
勿論AEWが柴田を起用する事が、悪い訳でもありません。
柴田は医師の診断のもと許可を貰い、AEWに診断書も提出してると言うので、安全面ではAEWも十分に考えているのでしょう。
今回の移籍は、三者の話し合いによる合意の元で行われた人道的にも契約的にもクリーンな物なので、そこにわだかまり等はありませんが、やはり難しいのは怪我を抱えた選手の扱いでしょうか。
そうなると最近で思い当たるのは、ノアが元日大会の目玉として組んだ丸藤正道vs飯伏幸太のドリームマッチでしょう。
大注目の一戦だったにも関わらず、終わってみれば期待されていたような内容ではなく、むしろ酷評される様な試合展開でした。
この要因となったのは、飯伏幸太のコンディションの悪さにあったと思います。
新日本時代のヘビー級ながらもキレッキレの動きをしていた飯伏を知っている者ならば、誰もが驚くくらいに飯伏は動きは悪く、普段の倍以上もテンポの悪い試合になってしまいました。
と言うのも飯伏は、戦前から怪我をしていたそうで、右足首の内側のくるぶしと右手の甲を骨折している状態で、本来は飛んだりする事できる様な状態ではなく、400mくらい歩くのが限界だったと言います。
この話を聞けば、飯伏がまともにプロレスを出来る状態では無かった事は明らか。
飯伏はその事をオファーされた時点で、ノア側にも伝えていたそうなのですが、丸藤vs飯伏を目玉に考えていたノアは「どうにか…」と再三に渡るオファーをかけて、それに折れる形で飯伏は参戦を承諾したそうです。
う~ん
これはどうなんだろう
勿論 最終的に参戦の決断したのは、他の誰でもなく飯伏本人です。
しかし そこまでの重傷を負っていると分かっている飯伏に対してオファーを再三に渡りかけたと言うのは如何なものでしょうか。
この試合が大注目のドリームカードで、話題性も十分で集客にも大きな影響を及ぼすという事は分かります。
しかし 話題性や集客力よりも選手の安全を第一に考えるべきだったのではないでしょうか??
飯伏もプロなので、リングに上がった以上は自分に出来る精いっぱいのプロレスをやったと思うし、あの状態で三角飛びケブラーダにまでトライしたのは、素直に凄いと思います。
しかし そんな飯伏だからこそ、あの状態で試合をさせて事故に繋がる可能性を考えてしまうと複雑な気分です。
リングに上がったのは自分の決断だし、プロならばリングに上がった以上は最高のパフォーマンスを見せろと言われればそれまでですが、それ以前にプロレス興行をやっている会社としては、歩行すら困難な飯伏にオファーをするという事は避けてほしかったですね。
つくづく今回の丸藤vs飯伏は残念
せっかくの超ドリームカードなのだから、万全とまではいかなくてももう少し良い状態での試合を観たかったです。
業界トップの座を狙うノア
かつて何度も流れている夢対決
既にレスラーとしてのゴールを見据えている丸藤と飯伏
もしかしたらそこに、多少なりとも焦りがあったのかも知れません。
でも例えそうだとしても やはり選手の安全面を最優先に考えてくれなくては、観ている側としても楽しめません。
話題性や集客も大事かもしれませんが、そんな物は二の次です。
自分の応援している選手が、リング上で事故にあう姿なんて誰も見たくないですし、どうせ極上の対戦を観るのなら極上の試合を観戦したい筈。
怪我をしている選手の扱いは、確かに難しい部分もあるかも知れません。
黙ってたら「試合をする」と言っちゃうのがレスラーですから。
だからこそ会社は、どの選手に対しても最高のパフォーマンスを出来る舞台を整えてあげて、最高の試合が出来るシチュエーションを作ってあげるべきだったと思います。
まぁ難しい部分が、あるのも確かですけどね。