新日本プロレス 春の風物詩ニュージャパンカップが、いよいよ開幕して早くも熱戦が繰り広げられていますが、開幕戦のカードで最も気になっていたカードが、元NO LIMIT対決の内藤哲也vs高橋裕二郎です。
2人はかつてNO LIMITとして、2階級に渡りタッグ戦線を賑わせてきた実績の有る名タッグチームでしたが、2011年の裕二郎の裏切りによって NO LIMITは終焉を迎えました。
NO LIMIT時代は、裕二郎の方がキャリアが上だった事も有り 内藤よりもやや格上の感じでしたが、2015年に内藤がロスインゴを立ち上げて 大ブレイクを果たす事で、裕二郎との立場は大逆転。
IWGPヘビー級王座を獲得した内藤の活躍に反比例するかの様に、裕二郎はジョバーの様な扱いに落ちて行き G1クライマックスの選考からも落選するのが当たり前になってしまい、いつしか両者の間には、明確な差が生まれていました。
その後は敵対関係にあった2人ですが、解散以降のシングル対決は一切無し
唯一対戦の機会があったのが、2021年のG1で、裕二郎もG1に復帰するようになり 内藤と同ブロックだった事も有り 久々の対戦が期待されていたのですが、内藤の怪我によるG1欠場の為に対戦は、残念ながら流れてしまいました。
そして迎えた今年のニュージャパンカップは、何と内藤と裕二郎が一回戦で激突!
実に11年振りの対戦となります。
一時期は、落ちる所まで落ちた裕二郎ですが、ここ近年は素晴らしいファイトを見せるようになり、飯伏幸太やジェフ・コブからも勝利を奪うなど、大物喰いも珍しく無くなってきただけに今回の内藤との再会は、大いに期待されていました。
ただ一つ懸念があるとすれば、現在の裕二郎はハウスオブトーチャーに属しており、仲間のEVILやディック東郷、SHOらの乱入や凶器攻撃で、試合がブチ壊される可能性がとても高い事。
そう言った無法ファイトをするのが、今の裕二郎のスタイルなので、誰もがグチャグチャな展開を予想していたでしょう。
しかし いざ試合が始まれば、裕二郎はまさかのクリーンファイトで、真っ向勝負!
かつての相棒との闘いを楽しんでいる様でもありました。
しかし試合終盤に差しかかると案の定 乱入してきたEVILとSHO。
2人がかりで暴行を加えられKO状態の内藤
「やっぱりこうなるのか……」と溜め息が漏れる中 何と裕二郎はEVIL達に、加勢せずに「今日だけは2人でやらせてくれ」と2人に懇願したのです。
この展開は熱かったです。
普段は無法ファイトに徹している裕二郎もvs内藤に関しては特別な思いがあるのか、純粋に力を競いたかったのか、例えEVIL達であっても邪魔はされたくないと言う意思表示を見せる裕二郎が物凄くカッコ良く見えました。
裕二郎の意志を汲んで、場外に降りるEVIL達。
「仕切り直しだ」と言わんばかりに、内藤を引き起こそうとする裕二郎。
このまま試合が再開されれば、間違い無く名場面だったんですが、裕二郎は何処まで行ってもハウスオブトーチャーの裕二郎でした。
引き起こした内藤に対しての いきなりのローブロー
場外で拍手しながら ニヤニヤするEVIL
全てはこの為の壮大な前振りで、完全に騙されてしまいました。
かつてのNO LIMIT対決を思い出させる再会マッチになるのかと思いきや、リング上をそんなセピア色に染める気は、裕二郎にはサラサラ無かったようです。
しかし反則を織り交ぜて来るとは言え、EVIL達がリング上に居ない以上は一対一なので、現時点で地力に勝る内藤が、裕二郎の凶器攻撃を避けてから 一瞬の隙をついてのジャックナイフで丸め込んで勝利をもぎとりました。
全ては”嘘”だった事に残念に感じた部分も少しはありましたが、これはこれで良かったんじゃないでしょうか? 過去の内藤と裕二郎ではなく 袂を別ってからの現時点での両者をぶつけ合ったのが、この試合の形だったと思います。
自分の意志でハウスオブトーチャーに加入し、批判の声も浴びながらも、あのスタイルを選択したのだから「過去」ではなく「現在」を見せる事に拘ったのも またプロとして見せるべき姿でした。
試合後には予想通り EVIL達が内藤に突っかかって来ましたが、内藤が返り討ちにした事で、スッキリとした形で結末を迎えれたし、最後は丸め込みなので 完全決着と言う訳では無かった為、内藤vs裕二郎のNEXTがあるかも・・・? と感じさせる物だったので、個人的には最良の着地点だったと思っています。
試合後に内藤は、現時点での”差”をしっかりと強調しながらも
「俺は今の高橋裕二郎を否定するつもりはない。自分の信じた道を突き進めば良いよ。そしてまた俺の視界に入ってくればいいかな。アミゴ・パサード(昔の友達)。俺にとっては外す事のできない人物なんでね。またシングルマッチで向かい合えるその日を、楽しみにしてるぜ、カブロン」
と内藤なりのエールも送っていました。
何だかんだ言っても内藤哲也の歴史に、高橋裕二郎が存在したのは事実
例え今は、立ち位置が全く違っていても また再びリング上で再会する事もあるでしょう。
セピアカラーの試合も良いですが、その時の2人なりの色をぶつけ合ってくれれば それで良いと思います。