2006年の新日本プロレスは、正に暗黒期の真っ只中で集客にも相当な苦労をし、毎年恒例の東京ドーム開催すらも危ぶまれていた次期でした。
プロレス界の盟主である事の証明・今後の1.4の使用権の確保、ドーム撤退となった場合のプロレス界のイメージダウン等など・・・
それらの要素を考えた上で、新日本は苦しいながらも2006年も1.4の東京ドームを決行します。
今思えばこの時の決断が、現在まで続く1.4の東京ドーム開催に繋がっているのだから”良い決断”だったとは思いますが、この時点では無謀とも言えるドーム開催。
メインイベントにブロック・レスナーと言う超大物が出場する物の 他はこれと言った目玉も無く、一年に一回の東京ドームには余りにも寂しいドーム大会になりそうな予感がしていました。
そんな中で新日本が取った苦肉の策とは、インディー団体との全面戦争。
これまで新日本・・・よ言うよりは長州力はインディー団体を認めない発言を繰り返し、自分達とは一緒にするな!と言うスタンスをとっていました。
この時点で長州は、退団して出戻りでは有った物の現場を仕切る立場だったので、この苦しい状況下で「背に腹は代えられぬ」と割り切ってインディーとの全面戦争に踏み切ったのかも知れません。
WJを経てインディー団体への認識を改めたのかも知れませんが、これまでの新日本はサスケやデルフィンらJr.ヘビー級の良い選手ならば、積極的に使って来ましたが、ヘビー級となると話は別で、大日本プロレスとの抗争と言う例外はあったにせよ インディーのヘビー級選手と関わる事は、ほぼ有りませんでした。
(大日本のヘビー級の小鹿やナガサキとは一度きり)
新日本としては「プライドを捨てた」と一部では、言われながらも迎えたインディーとの対抗戦。
中でも注目だったのは、獣神サンダー・ライガー&邪道&外道 vs 田中将斗&金村キンタロー&非道の6人タッグ。
言うまでも無く田中や金村達は、FMWやW★ING等のストリートファイトやデスマッチを主体とするリングで育ってきた選手。
同じ境遇からメジャーに這い上がって来た邪道&外道はともかくとして、バリバリのメジャー出身でありメジャー育ちのライガーとは、そもそものプロレスの原点が違います。
元々インディーに厳しい時代から「メジャーもインディーも無い」とそこに格差は無い事を強調する発言をし、お笑いプロレスもデスマッチも否定する事は無かったライガーですが、それをストロングスタイルを掲げる新日本のリングでやるとなると話は変わって来ます。
デスマッチ系の団体が、ホームでデスマッチをやる事に関しては、何も言わないでしょうが、鍛えに鍛えた己の肉体をぶつけ合うプロレスを信条とするライガーとしては、新日本のリングで彼らが凶器を使いまくりのハードコアなプロレスで来ようとする事に、我慢がならなかったのでしょう。
「有刺鉄線バットをリング内に持ち込んだら殺す」
ライガーは怒りに震えながら、こう語りました。
ライガーのプライドが見えた瞬間でも有りましたが、ただこれに関しては新日本がドーム開催が厳しくて、集客の為にハードコアを生業とする彼等を呼んだのだから、その彼等に対して「いつもと同じ事はするな!」と言っている様で、腑に落ちない部分は有りました。
有刺鉄線バットは、デスマッチでの必須アイテムで、彼等のアイデンティーでもあります。
持って来るな!と言うのなら、何の為に金村や非道を呼んだの?って話になってしまいますからね。
そもそも1999年には、大仁田厚を呼んで有刺鉄線電流爆破マッチまでやってるのに何を今更・・・って感じですが。
メジャーvsインディーの対立構造を明確にする為のライガーならではの煽り文句だったのかも知れませんが、そんなライガーの怒りに動じる事なく非道は、有刺鉄線バットを当たり前の様に、持ちこみライガーを攻め立てました。
この辺は非道は、プロだったなと思います。
ここで結局、有刺鉄線バットを持って来なかったら自分の色を自分で消して、自分のプロレスを否定する事になってしまいますからね。
試合は最終的には、金村が爆YAMAスペシャルで邪道を降し、試合後にはリング上でブリブラダンスまで披露されてしまうと言う・・・新日本としては、とんでもなく悔しい結末となってしまいました。
この時代の新日本は、今では考えられないですが、インディー団体に完全に蹂躙されてしまう位 団体の体力が最も弱っている時期。
それ故に、何のテーマも無く唐突に組まれたインディーとの対抗戦を・・・新日本プロレスを少しでも盛り上げようと言う、ライガーの発言だったと思います。