2006年の新日本プロレスは、正に暗黒期の真っ只中
橋本・大谷らがZERO-ONE
武藤・小島らが全日本
長州・健介・越中・健三らがWJ
柴田・村上らが、ビックマウスラウド
藤波・西村・吉江らが、無我ワールドプロレスリング
と言った具合に、2000年から2006年にかけて 日本一の層を誇っていた新日本の主力選手達が、次々と移籍や新団体を設立するなどして 新日本の人材流失が深刻になっていた時代でした。
となると当然 新日本最大の看板シリーズであるG1クライマックスにも多大なる大打撃となる訳で、当時・闘魂三銃士で最後まで新日本に残っていた蝶野正洋も欠場中と言う事で、出場選手は歴代でもかなり寂しい陣容となりました。
全日本のエース格にまで登りつめた小島聡の参戦は良いとしても 当時ヤングライオンだった山本尚史(現・ヨシタツ)や Jr.ヘビー級から獣神サンダー・ライガーと金本浩二の2名も選出され 12名の参加選手を集めた事で、どうにか大会は開催されました。
それまでのG1は、メンバーが豪華だった事もあって この2006年のG1はメンバー的には見劣りしたかもしれないし 観客動員的にも確かに劣っていたかも知れません。
しかし結果論としては、決して悪いG1では無かったと思います。
決勝戦での天コジ再会と言うドラマも良かったのですが、それ以上に深く印象に残ったのは、個人的に金本浩二の奮闘でした。
金本は、2004年にもG1参加を果たし予選リーグ脱落となるも最終戦で、中西学を撃破する金星を挙げており「G1に出るのは、これが最後」と燃え尽きたような発言もしていた事から 今後G1に出る事は、2度と無いと思っていました。
しかし新日本の緊急事態に、団体内でもトップクラスの人気を誇っていた金本に、会社から出場の要請があった事は、妥当と言えば妥当なんですが、それを金本が受けたのが少し意外でしたね。
この非常事態に黙っていられなかったと言う 新日本愛の強かった金本の男気でしょうか。
かくして新日Jr.代表として金本は、再びヘビー級の熾烈な闘いに身を投じる事になります。
当時から金本はJr.のカリスマとして 不動の地位を築いていましたが、それでもヘビー級が相手になると やはり分は悪く勝率的には、さほど震っていませんでした。
しかし今回は、意気込みが違うのか、予想外の結果を残す事になります。
初戦こそ 天山広吉に敗れるも
山本には、アンクルホールドで完勝
ブレイク前の真壁刀義とは言え ファルコンアローで完璧な勝利
そして永田裕志と熱戦の末に、時間切れ引き分け
何と2勝1敗1分で、リーグ戦を2位通過
Jr.ヘビー級としては、史上初となる決勝トーナメント進出を決めたのです。
ここまで来たら一気に決勝進出を期待しましたが、対角線に立つのは当時全日本の元・三冠王者の小島聡
普通にやれば まず勝ち目はありませんが、それでも金本は新日Jr.での闘い同様のバチバチの真っ向勝負を挑みます。
アンクルホールド、ムーンサルトプレス、タイガースープレックス、ファルコンアロー
次々に得意技を決めて何度も勝機を作り出し、会場も一体となって金本を応援しますが、やはり小島は強かった。
最後は余りにも強烈なラリアット一閃。
完全なる玉砕。
全ての力を出しきり 完全燃焼した金本はリング中央で、大の字に倒れ込みます。
もう動くことすらままならない金本は、そのままマイクを持つと親指を天に突き立て
「新日Jr.最高や!!」
と高らかに叫んだのです。
大谷、高岩、カシン、サムライ、ペガサス、ブラックタイガーら Jr.黄金期と言われた時代の盟友達も新日本を去った現状で、レベルの低下が叫ばれていた新日Jr.
金本が、このG1に出たのは勿論 会社の危機的状況を助ける為と言うのもあったかと思います。
ですが、誰よりも新日Jr.に、思い入れと誇りを持っていた金本は「新日Jr.は今でもこんなに凄いんだぞ!!」と見せる為に、もう出ないと決めていたG1に参加を決めたのだと思います。
新日本の為に・・・新日Jr.の想いを乗せて挑んだ金本の最後のG1は、最後の結果だけ見れば 順当な結果の完全玉砕ですが、それでも金本のお陰で2006年の夏は、例年に負けない位の熱い熱い夏になったと思います。
会場に流れるTUBEの”サンキュー”と供に、金本浩二の夏は終わりを告げました。