プロレスでは、様々な技がフィニッシュになります。
手や足 頭や尻までもを使う打撃技
他の格闘技には有り得ない投げ技
何処を極めても良い関節技
それが、プロレスの醍醐味でも有りますが、それぞれの技が複雑に進化し 多種多様な技がプロレス界には、存在する現在。
初めてみる人には、どこがどう痛いのか分からない技も多いでしょう。
しかしプロレスの歴史で、最も分かり易く痛みの伝わるフィニッシュ技と言えば「張り手」だと思います。
張り手がフィニッシュになると言うのは、ピンと来ない人も居るかも知れませんが、張り手からフォール決着した試合は、実際にありました。
1998年の全日本プロレス
UWF系から純プロレスに流れてきて間もない頃の垣原賢人と川田利明の一戦。
Uインター時代には、佐々木健介やゲーリー・オブライトから金星を奪った実績が有るとは言え、全日本プロレスにおいて垣原は、まだまだ若手に毛が生えた程度の扱いでした。
垣原のこの扱いには、当時大いに不満だった物ですが、川田との実力差は確かに大きかった様に思います。
得意の打撃を打ち込むも川田の強烈な一発で、あっさり形勢逆転を許したり、得意パターンのバックを取られてからの膝十字も極まりが浅く 垣原の勝機と言える場面は、正直ありませんでした。
試合終盤に、川田の放った張り手で ゆっくり崩れ落ちる垣原にどよめく場内・・・
張り手一発で、ここまで説得力を持たせられる選手は、そうそう居ないでしょう。
それ程 川田の張り手は強烈でした。
U時代のアインデンティーか、垣原が川田の投げ技を極力受けなかった為か、川田は徹底的に、打撃を駆使して垣原をボコボコにしていきます。
この試合で、垣原は強烈な張り手を何発貰ったかも分かりません。
最終的には、この張り手でフォールを奪われると言う結果になり、文章で見ると物足りないフィニッシュに映るでしょうが、実際にはフィニッシュとなっても納得の説得力溢れる張り手でした。
有る意味 これ程 痛みの伝わる技も無いでしょう。
豪快な投げ技や 複雑な関節技の痛みを実際に知っている人は少ないでしょうが、人生の中でビンタをされた事は、殆どの人は一度や二度位はあるでしょうから。
張り手を技と呼ぶかは、正直 微妙な所ですが「痛みの伝わる」と言うのは、プロレスにとって何気に、重要な部分です。
非・日常を演出するプロレスにとって「痛み」は、観ている者に日常を共感させる数少ない部分ですからね。
魅せる事に重点を置いたプロレスの中で、最もリアルを感じれる場面でもあります。
ただ、こんなのを食らった垣原は、たまったもんじゃないと思いますが、あんな張り手を何発も受けきった事を誉めるべきでしょうか。