永遠の中堅選手、ヒロ斉藤
ヒール道を貫き、反体制派に所属する事も多かったヒロですが、中堅選手でありながらも彼ほど所属ユニットに陰ながら貢献している選手は、居ないでしょう。
その試合運びの巧さも然ることながら、タッグマッチの乱戦の中で要所要所で繰り出されるセントーン。
それがヒロ斉藤のイメージだと思います。
進んで自らがフィニッシュを取りに行く事もなく、進んで主役を狙う訳でもなく あくまでバイプレイヤーに徹し 仲間の勝利に貢献してきました。
そんなヒロ斉藤にも誰もがアッと驚く主役に躍り出た瞬間が、幾つかあります。
1990年のIWGPタッグ戦
王者組・馳浩、佐々木健介vsスーパー・ストロング・マシン、ヒロ斉藤
当時の王者組は、格上の武藤敬司&蝶野正洋から王座を奪取して 2度の防衛を果たしている正しく昇り調子の新進気鋭のタッグチーム。
一方の挑戦者組は、一月前にブロンドアウトローズのツートップにあたるマシン&後藤建俊のチームで王座挑戦に失敗してばかりで、失礼ながら格的にはそれより一枚落ちるマシン&ヒロでの挑戦。
当時の勢いを考えれば、誰もが王者組の防衛を予想したでしょう。
しかしフタを開けてみれば結果は全くの逆で、マシン&ヒロが王座奪取。
しかもヒロが勢いに乗りまくっていた馳をフォールしたのだから誰もが驚きました。
そしてもう一つは1998年。
健介、中西学vs天山広吉、ヒロ
これは何の変哲もない普通のカードでしたが、前IWGP王者だった健介を筆頭に、中西も天山も既に新日本のトップグループの一角を担っていた時代。
この試合は誰の目から見てもヒロがフォールされるのは、明らかだったでしょう。
しかし待っていたのは、まさかの結末。
ヒロ斉藤が、何と前IWGP王者の健介を完全にフォールしてしまったのです。
当時の健介が、ヒロに不覚を取るのはちょっと考えられなかった事だし、この前年にはIWGPとG1を制覇しグランドスラムを達成している文句無しの新日トップだっただけに、これは物凄いサプライズ決着でした。
この様に、ヒロはその格の割には、とんでもない事をやってのけるのですが、その時のフィニッシュはいずれもダイビングセントーン。
通常のセントーンは、実に景気良くポンポン繰り出す為に、そこまで「必殺」のイメージはありませんでしたが、ダイビングセントーンとなると ヒロの体格のせいもあってか、その説得力は格段に増します。
ヒロが馳や健介に、正攻法で勝つ事はなかなか難しいでしょうが、試合でダイビングセントーンがヒットした瞬間には「もしかして…?」とヒロの大金星が頭をよぎった物で、実際にフォールを奪っているのだから、その破壊力はやはり本物でした。
格的には中堅の域を出ない選手ではありましたが、やはり「一発」を持っている選手は強い。
実現はしませんでしたが、仮にヒロがIWGPに挑戦したとしたら…まぁ順当にヒロは負けるでしょう。
殆どの人がそう予測すると思います。
しかし もしダイビングセントーンがヒットさえすれば、まさかまさかのヒロ斉藤がIWGP王者に…!なんて事も夢ではなかったかも知れません。
現実はそんなに巧くはいかないかも知れませんが、ヒロ斉藤の奥の手ダイビングセントーンにはそう思わせるだけの説得力が確実にあったと思います。