プロレスラーならば誰しも自分が最も得意とする必殺技を持っている物ですが、まだ自分の色が定まっていない大半の若手選手は、特定の必殺技を持っていない為に、プロレスの基本技である逆エビ固めで試合を決める事が殆ど。
例外的に、若手でありながらオリジナルの必殺技を持っている選手も中には居ますが、やはり殆どが逆エビ固めをフィニッシュに使用します。
しかし基本の逆エビ固めに、ほんの少しのアレンジを加えて自分らしさを出す選手も居ます。
キャラもまだ定まってない同世代の若手が多いと、どうしても埋もれがちになってしまいますが、必要以上に派手な技に走らずに、自分なりの基本技を武器にするのは良い事ですね。
天山広吉がヤングライオン時代に、得意としていた技が、抱え込み式逆エビ固めの一つ。
抱え込み式逆エビ固めとは、足首の辺りを脇に抱える通常の逆エビ固めと違い、太腿を外から抱え込む事で、より急角度で絞め上げる事のできる変形の逆エビ固めなのですが、この技がガッチリ決まれば なかなかの勝率を誇り、天山が若手時代にヤングライオン杯を制した時の技もこれ。
抱え方からみるに安定感は、それほど高くはないかもしれませんが、反り上げる角度がキツイので、正しくヤングライオン時代の天山の必殺技でした。
しかし逆エビ固めは、実際の威力の方はさておき ヤングライオンを卒業して中堅からトップ選手になっていくと殆どの選手は逆エビ固めは使用しなくなります。
やはり「若手の技」というイメージが邪魔をしているからでしょうか。
1995年の凱旋帰国以降は天山も新たな必殺技を複数習得した事もあり、抱え込み式逆エビ固めは使わなくなりましたが、1997年に中西学との試合で唐突に解禁して 見事なギブアップを奪ってしまいました。
この頃の天山や中西は、既にトップグループの一角として活躍していた時期なので、例え「若手のイメージのある技」でも使いどころを誤らずガッチリ極めれば充分にギブアップを奪えるという事ですね。
とは言え、トップ同士の対決でこのフィニッシュは、非常に珍しい決まり手。
これ以降ここ一番で、まれに隠し技的に繰り出す事があり、フィニッシュになる事も度々ありましたが、現在ではさすがに陽の目を浴びる事は無くなってしまいました。
ちなみに今まで、この技の餌食になった選手は複数いますが、受け手として最も優れていたのは西村修でしょうか。
ここで言う「優れている受け手」とは、相手の技をいかに「強烈そうに受けて見せるか?」という事になりますが、西村は業界でも屈指の柔軟な身体の持ち主。
なので逆エビ固め等の技を仕掛けると、普通なら相手の限界を超えなきゃ曲がらない様な角度まで、絞め上げる事が可能になります。
そりゃあ技をかける側からすれば、普通なら可動域を越える所まで反りあげる事が出来て、技を強烈そうに見せれる上に、怪我をさせてしまう心配も少ないという天山からすれば西村は最高の受け手となる訳ですね。
西村はヤングライオン時代から何度もこの技を受けてきましたが、天山が西村に抱え込み式逆エビ固めを掛ける姿は、実に絵になっていました。
「受ける」事もプロレスラーの重要な要素なので、レスラー冥利に尽きるものかも知れませんが、こんな技は絶対に食らいたくないですよね(笑)