ノアが元日から仕掛けたビックマッチの日本武道館大会は、大きな話題を呼ぶ注目の大会でしたが、ダブルメインイベントと称されながらも試合順的にも実質メインは、グレート・ムタvs中邑真輔。
そして実質セミとなってしまったのが、GHCヘビー選手権の清宮海斗vs拳王でした。
話題性からすれば しょうがない事ではありますが、これはノア最高峰の闘いに常に身を置いていた2人からしたら心中穏やかではないでしょうね。
それは拳王が、会見の場で偉大な先人達に、謝罪をした事にも表れています。
しかしムタと中邑の世界観、知名度、存在感、そしてこの対決による話題性に勝る事は、プロレス界全体を見渡してみても中々難しい話だと思います。
そんな中で清宮と拳王が、メインと勝負するには、やはり何度も激闘を重ねる事で、研鑽して来た2人ならではの闘い・・「これがGHC」と言うべき試合内容で、勝負するしかありませんでした。
恐らく2人ともそんな気持ちで、試合に挑んでいたと思います。
そしていざ試合が始まると物凄い試合でした。
拳王の重く切れ味の鋭いハイキック
清宮が独自の進化を加えた変形閃光魔術
打撃合戦だけでも見応え十分でしたが、共に得意とするスープレックスも繰り出し、正に一進一退の攻防が続きます。 特に試合が激しくなっていく中での清宮がカウンターで決めたフランケンシュタイナーは、タイミングもバッチリで実に効果的に決まっていて、まるで武藤敬司を思わせる物でした。
終盤で拳王のハイキックをかわしてからの リバース・フランケンシュタイナーも見事な一撃で、これは武藤には無い 清宮ならではの動きなので、変形閃光魔術といい、今の清宮は完全な武藤のコピーじゃない所が良かったですね。
試合は激戦の末に清宮が、変形閃光魔術でどうにか拳王を仕留め 王座防衛に成功していますが、とにかく凄い試合でした。
かつての四天王を思わせるような「死闘」というべき試合でした。
凄かった・・・凄かったんですけど、気になる部分もあったんですよね。
全体的に激しい技の応酬だったんですが、試合終盤で拳王が清宮に放った雪崩式断崖式ファルコンアロー。 あれは特にヤバかった・・・
完全にやっちゃあ駄目なやつでしたね。
落とされた清宮の身体が、エプロンサイドの角に激しく叩きつけられていたので、喰らった本人はかなり悶絶していましたが、高角度で床に叩きつけられると思っていた所に、不意を突いてエプロンの角に叩きつけられたのでは、想定外の衝撃なのでダメージ量は物凄い筈です。
あれをモニター越に観た瞬間には、思わず一瞬引いてしまいました。
激しい試合は見慣れている筈なんですけど、あれはヤバイです。
拳王が最初からエプロンサイドの角を狙ったのか? それともエプロンサイドか床に落とそうと思ったのかは定かでは有りませんが、あれが単なるミスだったとしたなら、余りにも危険な失敗。
拳王は大技の精度をもっと上げなくては、今後大事故に繋がりかねないので、偉そうに言う様で申し訳ないですが、そこは反省点ですかね。
仮に最初からエプロンサイドの角を狙ったのだとしたら、それは明らかにやり過ぎ。
エプロンサイドや床に叩きつけても大ダメージである事に変わりは有りませんが、想定外に角に叩きつけられた清宮の衝撃は計り知れないでしょう。
もし清宮が角に落とされる事を分かっていたとしても、鉄骨の角が相手では準備も受け身も関係ないですからね。
良くもまぁ あれを受けてこの後普通に試合にしたもんだと思います。王座戦が不本意な形で終わってしまう可能性もあっただけに、拳王は清宮の事を「頑張っているだけ」と評していましたが、流石にこの時ばかりは、拳王も清宮の頑張りに感謝したでしょうね。
とりあえず大事には至らなくて本当に良かった。
(表には出てないだけで大ダメージは負っているでしょうけど)
仕掛けた拳王にしても 受けた清宮にしてもメインの話題性に負けない為に、最高峰GHCの「試合内容」で勝負すると言う考えから、あの激闘に行きついて、お互いに覚悟の上での攻防だったとは思います。 しかし かつての四天王プロレスを彷彿させるような激闘は、冷や汗ものでした。
あれは三沢光晴や小橋建太だからこそ成立したのであって、出来る事なら下の世代の選手には模倣して欲しくは無いです(2人ならではの激闘ではありましたが)
激しい試合は良いですが、危険な試合はちょっと考えさせられますね。
ただ「GHCが実質セミに追いやられた責任」や「メインに負けないプレッシャー」そんな気持ちが2人にも強くあっただろうから、あの方向に進化してしまったのだと思います。
どんなカードであろうと 太刀打ち出来ないポッと出のドリームカードを いきなりメインに持って来られてしまったのだから清宮と拳王はワリを食ったと言うか・・・GHCをセミに追いやられた責任みたいな物を押しつけられて可愛そうではあるんですけどね。
それでも一つ思うのが
GHCは、これで良いのか?
今回の試合は確かに凄かったです。
凄かったからこそ、今後のGHC王座戦があの方向に進化しない事を望みます。
清宮も拳王も良い選手なので、あんな危険技を使用しなくても・・・受けなくても「これぞGHC!」という激しい試合を見せる事が出来ると信じているからこその苦言です。
超危険技ばかりに目が行ってしまいましたが、試合自体は充分に今年のベストバウト候補とも言える素晴らしい試合だったので、改めて清宮も拳王も良い選手である事は再確認できました。