現在ノアで開催中の「N-1 VICTORY2022」もいよいよ大詰めを迎え、残すは決勝戦のみとなりました。
武藤敬司の魂を継承した清宮海斗の闘いには注目していましたが、この大会が始まる前から、個人的にはノアにおける鈴木秀樹の存在が、最も気になっていました。
正直に言うと鈴木は、好きな選手ではありません。
しかし ノアの世界観に、鈴木と言う紛れもない異物が侵入してきた事は、それだけで興味を引く物がありました。
ノアが最もアレルギーを示しそうなアントニオ猪木が立ち上げたIGFでデビューした選手・・・と言うだけでも異物感は凄いんですよね。
猪木の息のかかった選手と言うだけなら新日本プロレス育ちの藤田和之や武藤敬司、船木誠勝も同じですが、武藤なんかはアメリカンスタイルがベースなので、猪木の匂いはそこまで感じないし、藤田や船木も出身こそ新日本ですが、格闘技の要素を含みながらもノアに置いても見劣りしないだけの強烈な投げ技や打撃技を持っている選手
その点 鈴木は余り派手な技も使わなければ、そこまでエグい打撃を得意とする選手でもありません。
特に鈴木の異色さに拍車をかけているのが、必殺技がダブルアームスープレックスという事ですね。
これはノアに限らず 相手を頭から落とさない投げ技がフィニッシュと言うのは、現代プロレスではなかなか珍しいかも。
スープレックスにまで限定すれば、頭から落とさない技をフィニッシュにしていたのは、スーパー・ストロング・マシンの魔神風車固めくらいでしょうか?
特にノアにいると それが尚更際立って感じます。
ビル・ロビンソンの弟子という事で、レジェンド直伝の必殺技でもありますが、これは強烈な個性でもあります。
ただ日本マットでも有数の激しい闘いを日夜繰り広げるノアマットで、鈴木のファイトスタイルやダブルアームスープレックスは、説得力的にもどうなのかな?と言うのが、正直な疑問でした。
しかし そんな心配は無用でしたね。
初出場となったN-1で、最終戦まで優勝戦線に踏み留まる 堂々たる闘いを見せたのです。
公式リーグ戦最後の相手は、潮崎豪。
潮崎は紛れもなく ノアのトップクラスであり、鈴木とは対極にいるようなキツい打撃や投げ技を得意とする近代的なプロレスをする ノアの申し子とも言える選手。
そんな潮崎との対戦は、どんな化学反応を生み出すのか興味津々でしたが、潮崎の重い水平チョップや豪腕ラリアートで吹っ飛ばされながらも コブラツイスト、卍固めのクラシカルな攻めで応戦。
ドラゴンスープレックスなどの大技も交えながら スリーパーホールドで脱力させると潮崎の首筋にエルボー落としていく非常な攻撃。
ここから潮崎もまだ粘りを見せますが、鈴木は駄目押しに強烈な膝蹴りを叩き込んでから、最後は必殺のダブルアームスープレックスで3カウント。
完勝でした。
実に利に叶った攻めで、日本マット界でもトップクラスに位置する潮崎豪からの完璧なフォール勝ちは、立派な実績。
この勝利により鈴木のブロック突破が決定した訳ですが、潮崎や拳王を抑えての決勝進出は見事の一言。
鈴木の実力は、どこの団体にいっても通用する事が証明されました。
頭から落とさない技でも 使い所で技を的確に決めれば、しっかり3カウントを取れるし 派手さの無いスタイルでも結果を残せる事の証明した今
鈴木に残された仕事は、N-1優勝という大仕事。
ここまでの結果を残しただけでも大した物ですが「決勝で勝たなければ、そこまで何勝してようが、誰に勝っていようが意味がないので。リーグ戦と同じ様に、決勝だからそれ以上に、とにかく勝ちにしがみついて戦いたい」と鈴木はどこまで行ってもハングリーに・・・そしてアグレシップに優勝を狙います。
決勝戦の相手は、武藤の意思を継いだ清宮海斗に決定しましたが、お互いにとっても今後のノアでの立ち位置を左右する重要な試合になります。
武藤を背負い そしてこれからのノアを背負っていくであろう清宮が優勢の様な気がしますが、個人的には鈴木に意地を見せて貰いたい所。
鈴木秀樹という明らかに異色な存在が流入してきた事で、今後ノアの闘いにも変化が訪れる可能性はあります。
鈴木が大きな結果を残したとなったら尚更。
変化を好まない人も居るでしょうが、新たな刺激で、ノアが更に面白くなるならそれもアリでしょう。
鈴木には、ノアをとことん掻き回して欲しいです。