数多くのオリジナルホールドを持ち、これまで様々な必殺技を使ってきた小橋建太。
その小橋のオリジナル技の中でも デンジャラスな技なのに、使用期間が長い割には必殺技として使用した事は無いと言う 珍しい技の一つがハーフネルソンスープレックスです。
相手の背後から片腕だけを羽交い絞めにして、もう片方の腕でタイツを掴み 後方に反り投げる技なのですが、フルネルソンの半分なので”ハーフネルソン”となる訳です。
この名前の由来に気づくのに、数年かかりました(汗)
小橋の試合では必ずと言って良いほど繰り出される技で、なかなかエグイ角度でマットに叩きつける為に、かなりのダメージを受ける技の筈なのですが、何故かフィニッシュとしては使いません。
上記で挙げたように必殺技として使用した事は一度もありませんが、1995年に一度だけタッグマッチで、サブゥーからフォールを奪った事はあります。
恐らく それ一回切りだと思いますが、あれ程 強烈な技を繋ぎ技に留めておくのは、少し勿体ない様な気もしますが、小橋の場合ハーフネルソンスープレックスをメチャクチャ連発してくるから相手はタマったもんじゃないですね。
相手によって角度は調節はしている様なのですが、厳しい角度で投げられるのは、常に三沢光晴でそれに次ぐのが秋山準でした。
これは2人の受け身を信頼しているからこその厳しい攻めなのは間違いないのですが、最も厳しい角度で毎回の様に連発されるのであれば、受け身の巧いのも考え物ですね。
下手な選手はそこまで、されないですから。
まぁ それはそれで、どうかと思うんですけど。
そして小橋のハーフネルソンスープレックスで最も印象に残っているのは、2003年に実現した蝶野正洋との一戦です。
直前に靱帯損傷の怪我を負った蝶野の勝利を予想した人は、ハッキリ言って少ないでしょう。
しかし蝶野は小橋の技を正面から受けまくり、試合終盤でのハーフネルソンスープレックス6連発は、悲鳴が上がるほどの非常な攻撃でした。
元々首に爆弾を抱えている蝶野にとって、こんな危険な技を連発で受けるのは、非常に危険な行為ですが受けきった蝶野は正しくプロ。
そんな蝶野に対して 同じ業界のトップレスラーとして一切の無さけもかけず手加減もせずに、非常に徹した小橋も正しくプロ。
「あそこまでしないと蝶野選手の心が、折れなかった」と試合後に小橋が語った言葉は、蝶野に対する最大級の賛辞と言えるでしょう。
この試合でキーとなったのは、フィニッシュになった小橋の剛腕ラリアットよりも むしろ本来繋ぎ技であった筈のハーフネルソンスープレックスだったと思います。
受けも受けたり。 攻めも攻めたり。
ハーフネルソンスープレックスと言う危険技の攻防が、2人のトップレスラーのベストバウトとも言える闘いと、覚悟の強さを見せてくれた様に思います。