試合に引き分け勝負に勝った裕二郎

10月18日の新日本プロレス 横浜武道館で行われたG1クライマックス・Aブロック公式戦最終日は、波乱の連続でした。

 

現・IWGP世界ヘビー級王者・鷹木信悟は、完全な自力での優勝は無くなった物の最終戦での高橋裕二郎に勝利さえすれば、後の試合にも結果にも寄りますが、決勝進出へ望みを繋ぐ事が出来ます。

一方の裕二郎は、開幕戦こそ飯伏幸太から大金星を挙げた物の、その後は全敗で決勝進出の可能性はとっくに消えているので完全な消化試合なんですが、新日本プロレスでの再浮上を狙っている裕二郎からすれば、消化試合なんて物は一つも無いでしょう。

 

ガムシャラに勝ちを拾いに行くのか、正直な所 この試合で裕二郎がどう出るかは分かりませんでしたが、いざ試合が始まってみると裕二郎の目的は、リングアウト狙い!!

確かに正攻法でフォール勝ちを狙うよりは、イージーな方法ではありますが自分の存在を知らしめる為になら、鷹木から完全な勝利を奪いに行く筈。

場外で鷹木を引き付け カウントギリギリで、自分が戻る戦略を取っている以上は、明らかに”何でも良いから勝つ事”を最優先にしています。

 

この状況でこの勝ち方をしようとしている事に対して考えられる事は、同じバレットクラブの仲間である メインに試合を控えたKENTAへの援護射撃なのか? 

それとも大嫌いな鷹木を不完全燃焼に終わらせて 単に悔しがらせたいだけなのか?

 

そこは分かりませんが、こうなってくると正攻法を信条とする鷹木からすれば、非常にやり難かったでしょうね。

鷹木をツブす事よりも、裕二郎は完全に鷹木の足を引っ張りに来ています。

 

場外でのピンプジュースを決めた場面では、裕二郎のリングアウト勝ちか!?と思わせましたが、ここで驚異的な回復力で蘇生した鷹木が、場外での危険なデスバレーボムで報復!

鷹木が勝利を確信してリングに戻ろうとした所を、何と裕二郎が鷹木の足にしがみつきリングインを阻止。 そこで遂に無情の20カウントが数えられ、まさかの両者リングアウトとなってしまいました。

 

鷹木痛恨の両者リングアウト!!

後の試合の結果を待たずして鷹木のG1は、不本意な形で終わりを告げてしまいました。

 

現在の新日本内での格も鷹木が上

現在の新日本内での実績も鷹木が上

 

決勝に進む為には、絶対に勝たなければならなかった鷹木。

勝ち方にも勝つ事にも拘らず、足を引っ張る事を優先した裕二郎。

 

試合結果だけ見ると両者リングアウトの引き分けですが、自分よりも格上の選手相手に、目的を達成した以上は、裕二郎の勝ちにも等しいと言えるでしょう。

逆に鷹木は、格下の裕二郎を仕留め切れずに、まんまと両者リングアウトに持ち込まれてしまったので、負けに等しいと言えます。

 

「試合に負けて勝負に勝った」と言う言葉はありますが、この日の裕二郎に関しては

「試合に引き分けて勝負に勝った」

正にそんな言葉が相応しいと思います。

 

内藤哲也との差を埋めようとしていた裕二郎には、出来れば最後まで本気で勝ちを狙いに行って欲しかった部分は確かに有りますが、これも裕二郎らしいと言えます。

かつて「オカダを俺の位置まで引きずり下ろす」と斜め上からの視点で、オカダと並ぶ事を画策した裕二郎らしさ全開とも言えますね。

 

裕二郎がメインのKENTAの援護射撃の為に、鷹木を脱落させたのかどうかは不明ですが(結局KENTAは敗れ脱落したが)試合後に引き上げる際の大仕事をやり遂げたと言わんばかりの「してやったり」の裕二郎の表情が、この試合の全てを物語っていたと思います。