2010年と言えば新日本プロレスが、まだ暗黒期から抜け出す一歩手前の時代。
客入りも満員とは程遠く、団体の先行きも不安な時期でしたが、そんな中に置いて新日本の顔とも言えるIWGPヘビー級王者になっていたのが真壁刀義。
暗黒期の厳しい状況の中歯を食いしばって、いつか新日本を再生させるべく奮闘していたのは有名な所で棚橋弘至ですが、勿論 全てが棚橋一人の力では無く 対角線に立ちながらも棚橋の脇を固めて来たのは、中邑真輔、後藤洋央紀 そして真壁刀義でした。
その中でも主要な位置に付いていたのは棚橋か中邑でしたが、その流れを良しとしなかった真壁が雑草魂を爆発させて 2009年には悲願のG1制覇
そして2010年には、遂にIWGPヘビー級王者にまで登りつめ、新日本の頂点に輝いたのです。
この時の新日本は暗黒期で会社の存亡も危うかったのも事実ですが、それとは対照的に好調をキープしていたNOAHにも勢いで、圧倒的に押され気味でした。
新日選手が、GHCヘビー級に挑戦するも連戦連敗
丸藤正道が、スーパーJ-CUP優勝
IWGPJr.ヘビー級を奪取した丸藤が5度の防衛
若手の青木篤士が、スーパーJr.3位の好成績
全ての試合で不覚を取っていた訳では有りませんが、大きな舞台でNOAHに苦汁を舐めさせられる事が多く、NOAHとの力関係もイメージ的に余り良い物では無かったと思います。
新日本としては何としてもNOAHに一矢報いねばなりませんでしたが、それと同時に会社を立て直して暗黒期から抜け出すのも急務。
時の王者にかかっていたプレッシャーは、大きかったでしょう。
2010年6月9日 大阪府立体育館
この日のビックマッチでは、新日本とNOAHの選手が対決する二つのタイトルマッチが組まれていました。
IWGPJr.ヘビー級選手権では、J-CUPから数えて新日Jr.に破竹の9連勝と言う無双を繰り広げていた王者丸藤に、スーパーJr.を初優勝したプリンス・デヴィットが挑戦。
デヴィット本人もこれまで、丸藤に2連敗しており3度目の正直となった訳ですが、奥の手・雪崩式ブラディサンデーを繰り出し遂に王座奪還。
実に半年ぶりに、新日本にIWGPJr.ヘビー級が帰って来た瞬間と新日Jr.の新エースが誕生した瞬間でした。
そしてメインイベントのIWGPヘビー級選手権では、王者真壁に潮崎豪が挑戦。
最初は力皇猛がする予定でしたが、欠場により潮崎に変更と言うドタバタがありましたが、潮崎は凱旋間もなく次期エース候補で当時のNOAHでは、最も勢いのあった選手。
若さと勢いでガンガン攻めて来る潮崎に対して、一歩も引かない真壁は真っ向勝負! 最後は力でねじ伏せ、スパイダージャーマンからのキングコングニードロップの必殺フルコースで、潮崎を見事に沈め初防衛に成功しています。
これまでNOAHに負け続けて来た新日本が、タイトルマッチで次期エース候補の潮崎を完全に打ち倒したのは、かなり大きかったと思います。
この日のデヴィットと真壁の勝利により、確実に新日本に風が吹こうとしていました。
試合後にデヴィットをリング上に呼び込んだ真壁は、こう高らかに叫びました。
「新日本の大逆襲が始まるからよ!」
これまで負け続けてきたNOAH。
暗黒期と言われ低迷する新日本の現状。
その2つに対する大逆襲と言う事でしょう。
ほぼ島流しの様な形で海外に送られ、凱旋後もプッシュを受けられずに冷遇を受けながらも、自らの努力と行動力でファンの支持を勝ちとり 新日本の頂点にまで登りつめた男の言葉だけに、この言葉に説得力はあったし 頼もしくも有りました。
実際にこの数年後に、他の選手の協力やブシロードの参入など・・・様々な要素は有りましたが、新日本はNOAHとの力関係を逆転したどころか、何処に行っても満員御礼の国内一人勝ちになるまでに、プロレス団体としての力を取り戻していく事になります。
真壁が王者だった期間は、それ程長くは有りませんでしたが、間違い無く真壁刀義の王者時代は、新日本の未来に希望を抱かせてくれました。