プロレスラーは誰しも自分が得意とする必殺技を持っているものですが、時折ライバル選手の得意技を敢えて使用する事があります。
その意図は、直接対決で挑発する為や その選手の分まで思いを込める為であったりとシチュエーションは実に様々ですが、1989年に長州力が繰り出したドラゴンスリーパーが印象的でした。
ドラゴンスリーパーと言えば、長州の終生のライバルである藤波辰爾の得意技。
そして この年の新日本プロレスでは「89ワールドカップ争奪リーグ戦」が開催され長州を初めとする所属選手や 多くの外国人が参加して 新日本最強の座を懸けて争う事になりました。
しかし この出場メンバーの中には、藤波辰爾の名前はありません。
この時 藤波は、椎間板ヘルニアを患い 1年以上の長期欠場の真っ只中だったのです。
このビックイベントに参加できないばかりか、日常生活にも支障をきたし 引退すらも考えていたと言う藤波は、さぞ無念の思いでこの大会を見ていたと思います。
その藤波の欠場中に凱旋後 頭角を現してきた橋本真也・蝶野正洋らの若い力は勢いを増し 長州・藤波らのニューリーダー世代の地位を脅かす位置まで登って来ていました。
そんな若い力に、まだまだ時代は渡すまいと 長州は同世代でライバルでもあり 同じ時代を生きた盟友でもある 藤波の想いも背負ってリングに立ちます。
時代を掴むべく勝ち上がってきた橋本と蝶野
時代を守るべく勝ち上がってきた長州
この3人は、勝ちあがるべくして勝ち上がって来たのですが、まずは準決勝で長州が蝶野をサソリ固めで粉砕。
そして決勝では、長州は橋本と対峙するのですが、この試合 勢いに勝る橋本も強かったですが、それ以上に時代を守ろうとする長州の強さが際立っており特にフィニッシュシーンが圧巻でした。
まずは同世代の木村健悟の得意技である 稲妻ラリアットで橋本をフッ飛ばし（長州がこの技を使うだけで驚きですが）更に、最大のライバル藤波の得意技ドラゴンスリーパーで、橋本を絞めあげます。
このコンボには「お前達に時代は渡さない！」「まだまだ俺達の時代だ！」と明らかに同世代のレスラー達の想いを乗せたメッセージを感じます。
橋本も意地を見せギブアップこそしませんでしたが、長州はそのまま橋本を絞め落としてフォールを奪い取り ワールドカップ優勝を果たしたのです。
藤波の技を使ってまでの優勝は、この大会を優勝する為の選手個人としての意地もあったでしょうが、「時代は守ったから安心して早く帰って来い」と藤波に対するエースも含まれていたのでしょう。
盟友の分まで闘うと言う このシチュエーションは燃える要素しかないですが、同世代の技を使って どうせ橋本に勝つのなら
木村の稲妻ラリアットでダメージを与え
藤波のドラゴンスリーパーで絞めあげて
木戸のキドクラッチでトドメを刺して欲しかったです(笑)
木戸だけ仲間外れにしないであげて