武藤敬司が1990年に、凱旋した際には華麗な技や動きで多くのファンを魅了しましたが、その中でも武藤の躍動感を良く表していた技の一つが、フェイスクラッシャーだと思います。
フェイスクラッシャーは、元々は武藤のアメリカ遠征時代に抗争を繰り広げていたスティングの得意技で、毎日のように試合していた中で何度と無く食らってきた技を自分の技とした物です。
相手の背後から飛び付いて髪の毛 もしくは首筋をつかんで顔面をマットに叩きつける原始的な技ではあるんですが、武藤の圧倒的な身体能力と持って産まれた華が、躍動感溢れる華やかな技に、昇華させているのでしょう。
武藤は凱旋当時は、背後を見せた相手の隙をついてフェイスクラッシャーを極める形でしたが、いつしかスペースローリングエルボーからのコンボと言う連携を編み出していきました。
しかし それはあくまで繋ぎ技
連携の中の一つの技と言う認識でした。
そこが武藤のもう一つの顔 グレートムタになる事で、変化が生じます。
基本的に武藤もムタも技はほぼ同じで、毒霧をはじめとした反則技が増えるだけだったのですが、1997年武藤がムタとしてnWo入りを機会に、今までとは変化をつけようとしたのか、ダイビングブレーンチョップをフィニッシュに多用するようになります。
このまま 新必殺技として定着させるのかと思いきや小島聡を相手に、毒霧からのフェイスクラッシャーで、何とピンフォールを奪ってしまいます。
フェイスクラッシャーで、3カウント取れるのか!?
これには驚きでしたが、要は使い方でしょうか?
毒霧からと言うのがポイントです。
目を見えなくしてから顔面を地面に叩きつける・・・考えてみれば これ程 理に適っていて痛そうな技も有りません。
視界を奪われた状態で、顔面砕きをされたら マトモに顔面からめり込んでしまうので、これは中々恐ろしいコンボです。
「フェイスクラッシャーは単なる繋ぎ技」と言う先入観さえ捨てれば 説得力抜群じゃないでしょうか。
この後 更に佐々木健介やIWGP王者・橋本真也からも この連携でフォールを奪っていたので、今度こそムタの新必殺技となる予感がしたのですが、結局 そんな事はありませんでした。
う~~ん残念
良い流れの技だと思ったんですけどね。
この後に、ムタから武藤としてnWoに加入した事で、しばらくムタは封印状態となった事も原因かもしれませんが、これは惜しい・・
単なる繋ぎ技でも 使い方や他の技との組み合わせ
出すタイミングなど工夫すれば 必殺技にもなると言う良い例です。
2000年に入ってからは、ムタでも足4の字固めやシャイニングウィザードでフィニッシュにしていましたが、そっちを使う位なら武藤との差別化で、ムタはフェイスクラッシャーを大事にして欲しかったな・・・と今でも思います。