藤波辰爾「我々は殺し合いをやってるんじゃない!」

炎の飛龍・藤波辰爾と言えば、プロレスファンならば誰もが知る人気と実績を兼ね備えていた 歴史に名を残す名レスラー。

ドラゴンスープレックス

ドラゴンスクリュー

ドラゴンスリーパー

などなど・・・ドラゴン殺法と呼ばれた数々のオリジナル技を編み出し プロレス界に多大なる影響を与えた あのリック・フレアーすら認める超一流レスラーです。

 

その実績を買われて(猪木のイエスマンであるから説が強いが)1999年から2004年にかけて新日本の社長に就任している。

選手としては超一流

しかし社長としては3流

悲しいかな優柔不断のコンニャク社長として すっかり浸透してしまった藤波の社長としての評価は、そんな所でした。

 

そんな藤波の社長っぷりを象徴する出来事が起こったのが、2001年の1.4東京ドームで行われた長州力vs橋本真也の一戦です。

当時の橋本は、新日本の方針に従わなかった為に、解雇されZERO-ONEで活動を始めたばかりで、当然の事ながら新日本の現場監督である長州とは、水と油の関係。

解雇され半年も経っていない状況での新日本参戦は、2人の遺恨決着戦として用意された舞台でした。

 

余りにも早過ぎる橋本の新日本参戦に、違和感は有りまくりでしたが、鉄は熱いうちに打てとばかりに、遺恨が冷めぬ内に激突させたと言う事かも知れませんが、年に数回行っていた東京ドームを埋める為の策だったと言う大人の事情もチラホラ見えます。

観ている側からすれば「大人の事情」なんてのは、どうでも良い話で2人の遺恨が、どう言った形で決着がつくのか・・・?

そこに注目していました。

 

試合が始まれば やはり肉体のぶつかり合いを信条とする2人だけに、真っ向勝負の凄まじいブツカリ合いでした。

何度となく叩き込まれた袈裟斬りチョップに、重爆キック

スピードに乗った力ラリアットに顎を狙ったパンチ

これまでに何度も行われてきた 長州と橋本の闘いその物です。

 

ただ一つ違うのは、相手をブッ倒しても互いに、フォールに行かない所で、何度ダウンを奪っても 只ひたすら相手に攻撃を仕掛けて行きます。 

 

これを解説席で観ていた山崎一夫が

「藤波さん!大丈夫ですか!?」

「潰しあいになっちゃいますよ!!」

「止めた方が良いですよ!!」と

同じく解説席に座っていた藤波を煽ります。

最初の内は静観していた藤波でしたが、何度も執拗に山崎に煽られ 立ち上がると両手で「×」を作るジェスチャーをしながらリングに上がり

 

「我々は殺し合いをやっているんじゃない!!」

 

と社長権限で、強制的に試合をストップさせてしまったのです。

俗に言う藤波の新ドラゴン殺法

ドラゴンストップです。

 

今でも物議を醸していますが、このストップはどう考えても不可解で、幾ら試合終盤がフォールに行かずに殴る蹴るになってたとは言え、無防備の顔面を狙ったりとプロレスの範疇を越えるような行為は一つもしていません。

 

全然殺し合いじゃないんですけど・・

鍛え上げられた箇所だけを狙って 充分にプロレスの試合をしていたのに、試合を止めてしまうと言うのは、如何なものかと・・・

 

テレビの前で観ていてガッカリした記憶はありますが、案の定 会場は大ブーイングです。

そりゃあそうでしょう

橋本vs小川の様な明らかにヤバい試合でも無く プロレスルールにのっとった激しいだけの試合だったのに、これをヒートして来た所で強制ストップするんだからファンが怒るのは、当然だと思います。

両者がフォールして決着の意思が無かった為というのなら ダウンした所でTKO裁定など 違う方法で試合を終わらせる事も出来た筈

不透明決着と言うのは、一番フラストレーションが溜まる終わり方ですからね。

それも東京ドームの目玉カードなら尚更な事です。

 

こういうのがウケると新日の上層部が勘違いしたのかどうかは知りませんが、この頃の新日本は、不透明決着が多かったのでファンと言えどもウンザリしていました。

そして付け加えるなら ストップした張本人の藤波の滑舌が悪過ぎて何を言ってるのかサッパリ分からなかった事が、ブーイングを大きくした原因のひとつでしょう。

試合を止めておいて その説明が何を言ってるのか分からないんだから当然ですが(笑)。

 

この当時の事を考えると 今の新日本は、本当に良く体制を立て直した物です。

バッドエンディングが有るのは仕方ないですが、不透明決着で有耶無耶にしちゃうズルい終わり方は、殆ど無いですから。

 

興業会社としては、良いカードを組んで客を入れる事だけを考えるのでは無く  来場したお客さんに、満足して帰って貰う事も考えなきゃ駄目ですよね。