旧・全日本プロレス時代からNOAHに至るまで 最も激しい受け身を取り続けて来た代表格は、言うまでも無く三沢光晴と小橋建太でしょう。
長年の激闘の末に、2人の身体はボロボロでしたが、特に小橋は得意技のムーンサルトプレスを若手の頃から使い続けていたので、両膝もかなりガタが来ている状態でした。
2000年のNOAH移籍の頃には、膝の状態の悪化に伴い ムーンサルトプレスの使用頻度も激減。
膝の手術に踏み切っての欠場~復帰後には、ムーンサルトプレスは打てない状態となっており残念ながら完全な封印状態となってしまいます。
復帰後にGHCヘビー級を獲得した物の その防衛戦は、絶対王者と呼ばれた小橋と言えどもムーンサルトプレスを打てない厳しい闘いの連続でした。
そして2004年
小橋の防衛ロードに現れた最強の挑戦者
プロレス界の帝王と呼ばれていた高山善廣です。
二人の闘いは、壮絶を極めます。
何発乱れ飛んだか分からない高山の膝蹴りに、唸りをあげる小橋の剛腕ラリアット
強烈なリアルブレーンバスターに、高角度のエベレストジャーマンが完全に炸裂しても それでもフォールは奪えません。
一体どれだけやれば勝負がつくのか?
そう思った矢先に、高山をマットに倒した小橋が拳を握ったのです。
小橋の握る拳と言えば、かつての小橋がムーンサルトプレスに行く際に、必ず見せていた「青春の握り拳」
まさか今の小橋が、ムーンサルトプレスを出来るのか!?
不安と期待で、場内がざわめくのを余所に、構わずコーナーに登っていく小橋
「やめてくれ!膝が壊れてしまう!」
会場内が騒然として見守る中 小橋は迷う事なく弧を描いて宙を舞いました
数年振りのムーンサルトプレス!!
これが高山の顔面にヒットし このまさかの一発で、ようやく3カウントを奪い激戦に終止符をうちました。
小橋のムーンサルトプレスは、若手時代の頃から何度も何度も観てきましたが、この時ほど、驚きと感動があった事がありません。
そりゃあ肉体的な全盛期の20代の頃の方が、美しく高いムーンサルトプレスを放っていたでしょうが、そんな事実よりも 小橋の覚悟や生き様を見せつけられた この時のムーンサルトプレスこそが、小橋史上最高のムーンサルトプレスだったと思います。
技の美しさや威力よりも その背景に見えるレスラーの生き様やドラマがあるからこそプロレスは面白いのです。
この日 小橋が身をもってそれを示してくれた様な気がします。