全日本プロレスからSWS
そしてWARと天龍源一郎と常に、行動を共にしてきた男 冬木弘道。
彼のプロレスセンスは、同業者にも認められてはいましたが、決して天龍と肩を並べる存在ではなく 一歩下がった位置で控え目に、常に天龍と言う御輿を担ぎ続けてきました。
そんな冬木が、豹変したのが1994年。
今まで支え続けてきた天龍が、大仁田厚にタッグながらもピンフォールを取られた事。
かつての天龍同盟の盟友であり フットルースのパートナーだった川田利明が、チャンピオンカーニバルで優勝した事。
この2つが引き金となって 人の悪口も絶対に言わない程の好青年だった冬木弘道を理不尽大王に、変貌させてしまいました。
これまで、冬木が一度も使用した事もないストレッチプラムを突如フィニッシュにしたのですが、ストレッチプラムと言えば川田のオリジナルの必殺技。
誰もが、チャンピオンカーニバルを優勝して全日本のトップになった川田を意識してのストレッチプラムだと思っていました。
試合後に記者に、それについて聞かれると
「指一本分角度が違えば、もう違う技なんだよ。よく見ろ!」
理不尽代王 誕生の瞬間でした。
確かにプロレス界に置いて 人のオリジナル技を使う事。
真似しておきながら独自の名前を付ける事。
この辺りは、日常茶飯事でしたが、この理論は無理があると言うか 正に理不尽です。
そりゃあ指の角度まで、完コピしてる人なんて居ないので、この理屈がまかり通るなら全ての技が、オリジナルになってしまいますからね。
「あんなしょっぱいヤツに負けてたまるか」
更には川田の事を「しょっぱい奴」とまで言う始末。
今までの冬木からは、こう言う発言は考えられなかったので、少し驚きが有りました。
これを聞いた当時は「川田のどこがしょっぱいんだよ!冬木の方がしょっぱいだろうが!!」と思っていましたが、今なら冬木がレスラーとして 劣っているとか、しょっぱいとかは思いませんけどね。
でも幾ら理不尽キャラの発言とは言っても 川田がしょっぱいとも思えませんけど・・・
結局は両方とも 良いレスラーと言う事です。
完全に理不尽代王に開眼した冬木は「あれは冬木スペシャルだ!」と開きなおり、それ以降この技を自身のフィニッシュホールドにします。
有る意味ここまでの開き直りを見せるのは、もう凄い事でプロレスラーとしての個性をしっかり確立していると言う事です。
でも後に川田の本家のストレッチプラムは、腰を落として捻りを加える形に変化していくので、スタンドで極める冬木スペシャルとは、指の角度どころか本当に別の技になってしまうんですけどね。
」