渕正信「・・・忘れものだ」

アントニオ猪木が作った新日本と

ジャイアント馬場が作った全日本

両団体は旗揚げ以来 水と油の様な関係で

これまで交わる事は、数える程しかありませんでした。

 

しかし2000年 歴史が動きました。

三沢光晴達の大量離脱で、川田利明と渕正信

所属選手が、たった2名になってしまう緊急事態を受けて 遂に新日本と全日本が歩み寄ったのです。

 

実際の所は、経営が苦しくなって来たので、禁断の対抗戦に踏み出したい全日本とビジネスとして話題最優先の新日本と 大人の事情が見え隠れはしていましたが、それでも両団体が本格的に交わる事は、物凄い大事件でした。

三沢や小橋の居なくなった全日本と言う事で、刺激が薄まったのは事実でしたが、それでも この出来事は、プロレス界のベルリンの壁が崩壊したに等しい事件だったのです。

 

そしてG1クライマックスが行われている両国国技館に、全日本の渕が来場し

 

「全日本と新日本の壁をブチ壊しにきました!」

 

と力強いマイク。

 

あれ? 何か渕がカッコ良く見える

おかしいな・・?

 

この後に出て来た 長州力とは握手を交わしますが、更にリングインして来た蝶野正洋は、渕に食ってかかります。

怒り心頭の蝶野は、現場監督の長州に詰め寄るも何故か あさっての方向に居た渕に、被っていた帽子を投げつけるフェイント?

 

それを拾った渕は、その帽子を被ってみせたりと至って冷静です。

 

蝶野がようやく リングを降りて引き上げようとすると蝶野を呼び止めた渕が

 

「忘れものだ」

 

と言って蝶野に、帽子をポンと投げて返したのです。

 

カ、カッコいい・・・

 

今の今まで渕をカッコ良いと思った事は、一度も無かったし 好きか嫌いかで言えば 嫌いなレスラーでした。

そして自分は、大の新日本ファンで、渕は・・まぁ外敵ですね。

 

でも この時ばかりは、渕のダンディーさに痺れました。

 

たった二人の全日本で、新日本に喧嘩を売り

たった一人で、新日本の会場に乗り込んできた状況が、そうさせたのでしょうか?

 

この時の渕正信は、カッコ良かったです。

 

念の為に言っておくと これ以降 渕をカッコ良いと思った事は、一度も有りません(笑)。