まだ見ぬ強豪
昭和から平成初期にかけてのプロレス界では、こんな言葉が良く使われていました。
インターネットが普及して情報社会となった現代では、ちょっと考えられませんが、日本に居ながら世界各国の試合やレスラーの情報などを いつでもどこからでも入手できるというのは、夢のまた夢・・・そんな時代でした。
来日した事の無い外国人の情報は、専門誌や数少ないビデオを視聴するしか無く、現在と比べて情報を入手する手段が少なかったので、あの時代には「まだ見ぬ強豪や未知の強豪」という言葉が、プロレス界では良く使われていました。
平成初期にまだ見ぬ強豪と言われていた選手の代表格は、レックス・ルガー。
ルガーと言えばNWAで、あのグレート・ムタ、リック・フレアー、スティングと並んでNWAの4強と言われていた選手で、紛れも無く米国メジャー団体のトップ選手の一角でした。
1991年当時のルガーは、WCW世界ヘビー級王者に輝いており 同年にはアメリカサーキットに来ていた かつてのライバルであるムタをも数分で料理している事から、その実力と実績はルガーを観た事の無い日本のファンにも知れ渡っていたと思います。
それだけに初来日が望まれていた訳ですが、満を持して待望の初来日となったのが、1992年の1.4 新日本プロレスの東京ドーム大会という最高の大舞台。
しかもセミファイナルで、WCW世界王座選手権まで行なわれると言うのだから、これは期待するしかありませんでした。
挑戦者は、前年のG1クライマックスを制覇した蝶野正洋。
実績だけ見ると両団体のトップ対決ではありますが、G1優勝を達成した物のIWGPヘビー級選手権にも敗れ G1以外では影も薄くなっていた蝶野の王座奪取は「ちょっと無いかな・・・?」と言うのが正直な予想でしたが、それでも日本での世界王座戦はワクテカした物です。
無難にルガーが防衛するとしても(蝶野に勝って欲しかったけど) ドームというお祭的な要素のある空間で、必殺のトーチャーラックやパイルドライバーが観れれば、それでも良いか・・・それ位に思っていました。
いざ試合が始まると日本のファンには受けが悪いと言うか、盛り上がりには欠けた部分はありました。
パイルドライバーは、序盤で蝶野にあっさりリバースされるし、トーチャーラックは場外で仕掛けてまさかのリングアウト狙い・・・
これにはドームもブーイングですよ。
そして試合終盤には、バックドロップを狙った蝶野に急所蹴りをお見舞いしてから、コーナーから両手を合わせてスレッジハンマーで蝶野の後頭部を殴りつけ、そのまま抑え込んで試合終了。
え?
これで終わり・・・?
パイルドライバーは結局決まらないの?
トーチャーラックは、あの場外のやつだけ??
まだ見ぬ強豪のルガーの試合を楽しみにしていたのに、何か思ってたのと違う・・・
世界王座戦のブランドに思い切り名前負けしている位の 盛り上がりに欠ける 実にあっさりした試合でした。
スレッジハンマーで決まるなんて観た事もないですよ。
こういう勝ち方は、アメリカンプロレスではまぁまぁ有った事ですが、これを日本でやられてもなぁ・・・って感じです。
タイトルマッチで、スレッジハンマーで決着とかは流石に有り得ない。
ルガーは「何で世界王座戦がメインじゃないんだ!」と憤慨していましたが・・・いや 本当これがメインじゃなくて良かった。
スレッジハンマーは無いわ。