棚橋弘至のスイングドラゴンスリーパー

ドラゴンスリーパーは、藤波辰爾が開発した代表的な必殺技で、藤波に憧れる選手や、飛龍継承を掲げる選手が好んで使用する事の多い飛龍殺法の一つ。

若き日の棚橋弘至も飛龍継承を掲げるその一人でした。

 

2000年代当時の棚橋は、まだACEと呼ばれる前の発展途上中の時期で、藤波のコピーと揶揄されるほどに、数多くの飛龍殺法を使用していました。

ハイフライフローを習得するまでは、メインの必殺技こそ ドラゴンスープレックスでしたが、この時期の棚橋はドラゴンスリーパーもフィニッシュにする事が多く 使い手が余り居なかった時期だった事もあり、日本マットを代表するドラゴンスリーパーの使い手でした。

 

腕極めドラゴンスリーパー

スパイラルドラゴンスリーパー

幾つかのドラゴンスリーパーも編み出した棚橋ですが、その中で最もインパクトもあったのが、スイングドラゴンスリーパーだったと思います。

 

スタンド状態で、ドラゴンスリーパーに捕らえた相手をジャイアントスイングの様に、そのまま振り回し、絞めの効果に加えて平衡感覚まで奪ってしまう荒技。

2006年のTNA遠征での AJスタイルズ戦で初公開。

 

豪快な技ですが、ドラゴンスリーパーで振り回すには、技の性質上クラッチがやや不安定な為に、数回しか回す事が出来ないので、馳浩のジャイアントスイングの様に、40回転とかは絶対に無理です。

更にあのクラッチで振り回すには、相手が軽量級である事が絶対条件だろうと思われるので、大きな相手には やや掛けづらい・・・等など欠点が多数ある技では有りますが、それを差し引いても この技はカッコイイ!!

 

例え幾つかの欠点があろうとも「カッコイイ技」これだけで充分です。

 

勿論欠点だけではなく、この技ならではの利点も有ります。

数回しか回せないからこそ、見た目の物足りなさを払拭する為に、棚橋が考え出した連携だと思いますが、数回ブン回した後に、ファイナルカットに繋ぐと言う効果的な連続技も開発しており これがまたカッコ良い。

確かにファイナルカットはドラゴンスリーパーの体勢から入る技なんですが、だからと言って振り回している最中に、ファイナルカットに繋ぐと言う発想がまず物凄いです。

 

棚橋のプロレスに取り組む姿勢は素晴らしく この時期は面白い試合をする為に、とにかく色々な事を試していた感がありました。

このスイングドラゴンスリーパーは、暗黒期の真っ只中で棚橋弘至が光明を見出そうとしていた最中で生まれた 新日本再興への一歩の中の・・・更に小さな一歩です。

こう言う風に一つの技に工夫を重ねる事で、試合の中で幅を持たせインパクトを与えて、それまでブーイングや批判の対象だった棚橋が、好試合や激闘を通じて徐々に支持を集めて行き、それが結果的に新日本の最高に繋がったのは言うまでも有りません。

 

最近は飛龍継承を掲げる事も無く 自分独自のスタイルを開眼している為に、ドラゴンスリーパーも以前に比べて見せる事は少なくなったので、必然的にスイングドラゴンスリーパーを出す事も滅多にありません。

でも棚橋の歴代の得意技の中でも かなり好きな技です。