中邑真輔のスタンド式腕ひしぎ逆十字固め

中邑真輔が好きではありませんでした。

 

唐突ですが、中邑と言うレスラーが好きではなかったんです。

と言うのも中邑がデビューした2002年は、総合格闘技全盛の時代で新日本プロレスもその激流に飲まれ レスラーがオープンフィンガーグローブを着用して、格闘技寄りの選手や技が溢れていた時代。

格闘技も好きなんですけど、格闘技とプロレスは別物と捉えていたので、純粋なプロレススタイルが好きな自分としては、本当に嫌な時代でした。

純プロレスと言う言葉が出て来る事自体が嫌な風潮でした。

 

そんな格闘技時代を象徴する選手が、2002年にデビューした中邑真輔。

入門時から総合格闘技やレスリングの実力を買われ、通常ならば誰もが通るヤングライオンをすっ飛ばして特別待遇でのデビュー戦や、G1初出場の大抜擢。

アントニオ猪木にも目をかけられ、キャリアの浅い内からの格闘技戦への出撃を果たしたばかりか、何と事もあろうに新日本最高峰の王座IWGPヘビー級に、僅か1年4ヶ月で挑戦。

 

キャリア2年にも満たない若手の挑戦には納得いかない部分もありましたが、まぁ挑戦自体はまだ良いです。 でもこうなったら応援するのは、王者の天山広吉です。

天山は凱旋帰国から9年 7度目の挑戦でようやく手に入れたばかりの王座なので、昔から天山を見て来た者としては、どうしても感情移入してしてしまうし、ポッと出の特別待遇の若手とでは、感情移入と言う点では比較になりません。

ようやく手に入れた王座の初防衛戦の相手として選ばれたのが中邑だったのですが、若く勢いの有る選手に胸を貸してあげて手堅く初防衛・・・・と言うのが誰もが思い描いていた結末だったと思います。

 

しかし蓋をあけてみたら衝撃の結末。

天山の猛攻に耐えて耐えて 防戦一方だった中邑が、最後に天山をロープに振ると見せかけ
飛びつき三角絞め。 逃れようとする天山に合わせて 素早く横にスライドして自分の頭を支点にする形で、立った状態のまま腕ひしぎ逆十字固めに入ると、腕が伸びきった天山はまさかのギブアップ!!

何と中邑が1年3ヶ月のキャリアで、IWGP王者になってしまったのです。

 

これは、かなりの衝撃でした

さんざん苦労して来た天山のIWGP初戴冠を 初防衛で終わらせてしまうと言うこの展開には、新たなスターの誕生と言っても手放しで喜べる物ではありませんでした。

 

それがあるだけに、最後の技も今までやられまくっていたのに、最後だけ格闘技的な技で逆転ってズルくね??とまぁ、色々批判的な意見もあったし、自分も余り良い感情はありませんでしたね。

その後も、頻繁に使い 多くの先輩レスラーからギブアップを奪い、中邑は新日本トップレスラーへの階段を駆け上っていくのですが、プロレスファンと言う物は、とにかく鳴り物入りや特別待遇される選手を嫌います。

やられまくって最後だけ関節技で、美味しい所を持って行くと言う中邑のファイトスタイルも相まって この頃の中邑の支持率は低かったと思います。

 

しかし単純にこの技だけを見ると フェイントから入り、流れる様に逆十字固めに移行する技の流れは美しく 物凄く良い技なんですが、「若手の癖にIWGP王者になった」と言う変なフィルターがかかっていたせいで、全てが悪いイメージになっていたのかも知れません。

格闘技的なスタイル自体は好きじゃないし、この頃は中邑も好きでは有りませんでしたが、暗黒期の新日本を棚橋弘至と供に支え、実直にプロレスと向き合う中邑の姿を見て行く内に、そんな考えも無くなり いつの間にか好きなレスラーになっていました。

 

中邑のスタイルも試行錯誤を重ね、技の捨取選択の末に格闘技的な技や動きの排除で、クネクネイヤォな中邑に変貌した事で、スタンド式腕ひしぎ逆十字固めは、完全に使われなくなっていきました。

封印状態にあって久しかったのですが、2015年に勢い乗るオカダ・カズチカとの対戦でスタンド式腕ひしぎ逆十字固めが数年振りに解禁され、オカダから見事なギブアップを奪ってしまった時には興奮でした。

 

12年前は、あんだけ嫌いだった中邑と技なのに、この時には

「久振りにスタンド式逆十字キターーーッ!」ですから

 

自分で言うのも何ですが現金な物です(笑)