田上明と言えば、恵まれた体格とナチュラルなパワーを武器に闘う選手ですが、喉輪落としやダイナミックボムなど・・・豪快な技を多く使いこなすのですが、打撃技に関しては、そこまで印象にないんですよね。
大相撲で培った突っ張りなんかは稀に見せる事も有りますが、そこまで頻繁に使う技でないし、ラリアットやチョップも使う事はあるんですが、お世辞にも余り上手とは言えないレベルだったと思います。
しかし田上の打撃技で、純粋に凄いと思ったのがダイナミックキックで、要するにジャンプしながら打つフロントハイキックなんですが、単純な技ながらも田上の身体能力が活かされた技でしょう。
田上は元々フロントハイキックは得意としていて、若い頃から良くジャンボ鶴田と2人並んで打ちこむ連携も得意としていましたが、正直言うと余りカッコ良くないし微妙な技でしたよ。
でもジャンプを加えただけなのに、このダイナミックキックは違います。
かなり見た目的にもカッコよくなったのも有りますが、その名前の通りダイナミックさが全然違います。
長身から繰り出す飛び蹴りは、正にダイナミックその物で、蹴り足の”伸び”が物凄い印象があります。 何気に田上って身体能力も結構高いので、ジャンプも高いし 相撲出身だけあって身体が柔らかい事も有り 開脚が素晴らしいのでフォームもサマになってるんです。
通常のフロントハイキックは正面向きで足を突き出すだけですが、ダイナミックキックはジャンプしながら やや横向きで蹴り込んでいく感じが良いですね。
別名・大開脚キックと呼ばれていた様に、見事な一撃。
基本的には繋ぎ技で使っていましたが、あくま繋ぎ技だったので迫力の有る技だけど トップ陣からフォールを奪えるほどの技では無いのかな・・・と勝手に思っていました。
しかし1997年の世界最強タック優勝決定戦では、あの秋山準をダイナミックキックで撃破し最強タッグ2連覇に成功しているのです。
まだ僅かに四天王には及ばなかった時代だったとはいえ、タフで打たれ強い秋山からのフォール勝ちには驚かされました。
翌年の1998年には、チャンピオンカーニバル公式せで三沢光晴からも
キッチリと、このダイナミックキックで白星を挙げている。
秋山の時はタッグだったし 一応はまだ秋山が格下の時代だった事も有り まぐれの一発だったとしても まぁ納得はできましたが、シングルマッチで三沢撃破ともなれば話は別です。
充分過ぎる程に、必殺技としての破壊力を兼ね備えていると認めざるを得ません。
でも何故か これ以降フィニッシュになる事はありませんでした。
ダイビング式で、ベイダーからもフォールを奪った事はありましたが、やはり田上としては喉輪落としに強いこだわりがあったのでしょうか?
大体の選手は体力の低下と供に、持ち上げる技を減らして 比較的省エネで済む関節技や打撃技をフィニッシュにしていく傾向が強いのですが、田上の場合は全くの逆で、どんどん喉輪落としのバリエーションを増やしていったのです。
晩年は喉輪落としも高度が下がっていた様な気もしましたが、人間である以上体力の低下は誰しも有る事なので、しょうがない事ではあるのですが、仮に田上がダイナミックキックをメインの必殺技にシフトしていれば、田上はまた違ったキャリアを迎えていたかも知れません。
しかし それも田上自身が選んだ 田上の生き様だったのでしょう。
ダイナミックTの名に恥じない、ダイナミックな技でした。