マサ北宮のサイトースープレックス

プロレスラーには試行錯誤を重ねた末に、自分で開発した技を大事にする選手も居れば、憧れの選手や師匠から譲り受けた技を大事にする選手も居ます。

どちらが良いとかの話では無いですが、誰かから技を継承すると言う事は技その物だけではなく その技に込められている想いも継承すると言う事。

 

誰かの代名詞たる技を使うのは、普通に技自体がカッコイイからだけではなく、そこにリスペクトがあるから。  

マサ北宮の使用するバックドロップが、正にそれです。

 

北宮は、NOAHに所属する以前は、佐々木健介率いるダイヤモンドリング所属でしたが、ダイヤモンドリングのスーパーバイザーを務めていたのが、マサ斎藤でした。

マサ斉藤は現役時代は、決してトップレスラーでは有りませんでしたが、歳をとってもグッドコンディションを維持しつつ 若い選手以上にタフなボディ。

年齢を感じさせない切れ味鋭い 捻りを利かせたバックドロップは、正に昭和の名レスラーと呼ぶに相応しい選手でした。

 

小細工なしの武骨なマサ斉藤のファイトスタイルは、北宮が目指すそれと一致していたので、ファイトスタイル的にも人間的にも 北宮は斉藤に強い憧れを持っていました。

あの長州力や佐々木健介も 斉藤の事は慕っていたので、健介の元に弟子入りしていた北宮が、斉藤に憧れを持つのも当然の事だったのかも知れません。

 

2014年にダイヤモンドリングから正式にNOAHに移籍となった北宮は、新たな所属先で奮闘していましたが、なかなか殻を破る事が出来ずに燻り続ける毎日。 
何とかノシ上がる為に、憧れの存在であるマサ斉藤の得意技バックドロップを自らの必殺技として 2016年からサイトースープレックスとして使用を始めます。

普通にバックドロップの名前で使ったり オリジナルな名前を付けても良さそうな物ですが、サイトースープレックスとしている辺りが、北宮のマサ斉藤に対するリスペクトを感じますね。

 

マサ斎藤から直接の指導を受けて、バックドロップを継承した訳ではないが、何度も映像で観た斉藤のバックドロップに、自分なりの工夫を加え 持ち上げてから2~3歩進む事で落とす角度を調節すると言う形に、改良を加え技を完成させた。

単なるバックドロップでは有りますが、北宮の強い憧れと尊敬の念がこもって研究の末に、ようやく完成した必殺技と言えます。

 

それまでは、中堅選手の域を出なかった北宮でしたが、時のGHCヘビー級王者・杉浦貴からサイトースープレックスで、2度に渡りピンフォールを奪う事でタイトル戦にまでこぎつけているように、必殺のサイトースープレックスを身に付けてからの北宮は、確実に一段ステップアップしました。

2021年現在で、GHCヘビー級王座にまでは、もう一歩の所で手は届いていませんが、サイトースープレックスでNOAHの並み居るトップ選手を何度も撃破し、ダイヤモンドリング時代の兄弟子である中嶋勝彦からもフォールを奪う等の活躍を見せています。

 

マサ斉藤のスピリットとバックドロップを受け継いだ北宮の姿には、直接の師弟関係は無いとは言え マサ斎藤の姿を重ねて見る事が出来ますね。

コスチュームまで、マサ斎藤みたいになる必要は無かったと思いますけど。