武藤敬司のフラッシングエルボー

プロレスラーにとって個性とは、自らの商品価値とも言える大切な物なのですが、個性の表現の仕方と言っても、コスチュームや髪形などのビジュアル面から、他の誰もやらない様な特殊なムーブ。

そしてオリジナルの技などがあります。

 

なので、自らの価値を高める為に様々な選手が、様々な技を開発する訳ですが、何も完全なゼロからのオリジナル技だけが、技の個性と言う訳ではありません。

中には誰もが使う規制の技でも、魅せ方一つで立派な個性となる事も有ります。

 

その代表格とも言える技が、武藤敬司のフラッシングエルボーじゃないでしょうか?

フラッシングエルボーと言ってもザックリ言えば、単なるエルボードロップです。

 

しかし単なるエルボードロップと言っても武藤が使えば、他に誰もが使った事のない、使ったとしても誰にも真似の出来ない個性溢れる独特な技になってしまうのだから驚きです。

低空で滑り込むように体に捻りを入れながら、エルボードロップを落とすのですが、まずこのスピードが尋常じゃないんです。

「捻りを入れる事に何の意味が有るの?」と思うかもしれませんが、武藤が捻りを加えながらエルボードロップを落とすだけで、会場を凄まじい華が支配します。 少なくと初めて観た人は度肝を抜かれます。

これは、プロレスとしては大事な事。

 

武藤のコンディションの問題から、1990年代前半が最もフラッシングエルボーが映えた時期でしたが、それまでのゆっくりした試合展開から、急にギアチェンジをしたかの様に、急に物凄いスピードのフラッシングエルボーを放ち、まるでリング上の時間の流れが変わったんじゃないか?と錯覚させる様な、あの瞬間が好きでした。

それと同時に、ドッと沸く会場の雰囲気も好きでした。

 

他のどの選手にも負けない華を醸し出す武藤ですが、あの圧倒的な華を演出するのに、フラッシングエルボーは必要な技の一つでした。 単なるエルボードロップをあれだけオリジナリティ溢れる 華のある技に昇華させる辺りは、やはり武藤は天才なんだなと思います。

普通のエルボードロップを独特な動きで魅せた点もそうですが、やはり あの尋常じゃないスピードで、捻りを入れながらエルボーを落とせる武藤の身体能力も特筆すべき点。

あの長州力が武藤と初対決をした際に「早くて動きが見えない」と語っていた様に、リング上で武藤と対峙してその技を体感するのと、我々ファンが単に会場やテレビで見るのでは、全然違うんでしょうね。

 

後年に武藤のフラッシングエルボーを真似る選手も居ましたが、どうしてもドタバタ感が有ると言うか・・・本家の凄さを際立たせる結果となってしまうのは、しょうがない事でしょう。

技自体は普通の技なのに、少しのアレンジで誰にも出来ない凄い技にしてしまい、それををいとも簡単にこなしてしまうのは、やはり武藤が一流のプロレスラーと言う事。

 

今後 武藤並みのフラッシングエルボーを使う選手は、果たして出現するんでしょうか?