棚橋弘至の電光石火

数え切れない程あるプロレス技の中で、丸め込み技も近年のプロレス技の進化に伴い 単純な物から複雑な物まで、かなりの数にのぼると思います。

相手にダメージを与えなくても一発逆転を狙えるし 場合によっては相手の技を切り返す手段にも使える為に、様々な局面で使われるのですが、数ある丸め込みの中で最も評判が悪かったのが、棚橋弘至の電光石火でしょうか?

ここ数年は使っていない技なので、知らない人も多いかも知れませんが、簡単に言うと相手に向かって走り込んでからの首固め(スモールパッケージ)です。

 

この技を使っていたのは、2004年頃の新日本が暗黒期だった時代で、棚橋も期待されながらも なかなかファンの支持を得られずに、苦しんでいた時期だったと思います。

団体も棚橋本人も逆風の中を進んでいたので、やる事なす事全てが、批判の対象になっていた部分は確かにあったと思います。

それを差し引いても電光石火の批判は、物凄かったです。

 

試合終盤で、大きく吠えて相手に向かって走り込むから「何か大技をするのか?」と普通は思う所で、まさかの首固めですから観客もポカーンでした。

電光石火で、天龍源一郎や鈴木みのると言った大物からフォールを奪っているのにも関わらず、全く認められなかったのは、この技その物と出すタイミングが良くなかったからでしょうか。

終盤の大技ラッシュを仕掛けている時に、急にトーンダウンしたかの様な首固めで、イケイケムードだった流れを自ら断ち切っちゃってましたからね。 

 

棚橋も当時は、まだキャリア五年の発展途上中だったので、しょうがなかったのかも知れませんが、若くしてG1やIWGP戦線に駆り出された弊害かもしれませんね。 

後年になって当時の試合を棚橋本人が改めて観た事があり「このタイミングで首固めかよ!」と思ったらしいので、やはり技を出すタイミングが悪かったのでしょうね。

 

評判が悪かった事を気にしたのか、何故か電光石火は使われなくなりますが、その後 棚橋はIWGPヘビー級やG1クライマックス、ニュージャパンカップを制覇

プッシュを受けていた若手から 名実供に新日本のエースへと大きく成長をしていきます

 

そして2008年 全日本プロレスのチャンピオンカーニバルに出場した棚橋は、公式戦最終日に当時全日本のトップだった小島聡と対戦。

試合終盤の激しいロープワークの攻防で、小島がトドメに放ったラリアットを掻い潜って ここで飛び出したのは、まさかのトップスピードからの電光石火!!

これで見事な3カウントを奪ったのですが、数年振りに飛び出した電光石火は、タイミングもバッチリで、良い意味で意表を突いた事もあって 電光石火史上最高の電光石火だったと思います。

この時ばかりは、このタイミングで繰り出された電光石火に、絶賛の声は有れど批判的な声は一切ありませんでした。

 

大技攻勢の途中で流れを断ち切る様に狙いに行くのではなく、激しい展開の中で相手の意表をついて決める電光石火が、これ程 効果的とは思いもしませんでしたね。

結局この小島戦以降 電光石火は、再び封印状態となるのですが、こんな良い使い方が出来るのなら これからも大一番で隠し技として使ってくれる事を密かに願っています。

 

それにしてもしても 同じ選手が同じ技を使っても 出し方一つで、こうも変わる物なんだなと・・・やっぱりプロレスは奥が深い。