武藤敬司「ただ間違えただけだよ」

時は1997年 プロレス界に限らず他業界を巻き込んだ程の 世界中が空前のNWOブームに沸き 蝶野正洋率いるNWO JAPANを擁する新日本プロレスも黄金時代を迎えていた時です。 

 

あっという間に、新日本を牛耳ったNWOですが、更なる勢力拡大を図るべく蝶野が、目を付けたのが 当時・正規軍であり絶対的なベビーフェイスであった武藤敬司。

武藤は誰よりもアメリカを知る男で、人気もNo.1

そして武藤の実力を誰よりも知っている蝶野が、武藤に白羽の矢を立てたのは、当然と言えます。

 

そして蝶野は、武藤にNWOシャツを渡す素振りを見せて「NWOに入れ!」と勧誘を開始。

当然ながら橋本真也と並んで正規軍のエース格の武藤が、そう簡単になびく筈が無いのですが、諦めない蝶野は、連日にわたってしつこく勧誘を続けます。

武藤はこの時点で、NWO入りを承諾してもいないのに、蝶野は「既に武藤とは繋がっている」と仄めかし これにより正規軍の中に武藤の事を疑う者も出てきます。

 

これが策士・蝶野の巧い所で、武藤の正規軍での居場所をジワジワと奪ってゆきます。

 

タッグマッチで、結果的に武藤がパートナーを救出 出来ずに見殺しにしてしまった事や パートナーの橋本に、ミサイルキックを誤爆させてしまった事等 普段なら良く有る光景でも この時点で不信感を持たれている武藤の立場は、更に悪い物になっていくのです。

 

そして ある日 武藤が小島聡と組んで NWOチームとタッグで対戦した際に、後ろを向いていた小島にそーっと忍び寄り・・・まさかのフェイスクラッシャーを喰らわせたのです。

 

武藤の裏切り!?

何が起こったのか分からない小島は、そのまま相手チームに攻め込まれて敗戦となりますが、これには当然 被害者の小島もセコンド陣も武藤に抗議の嵐!

武藤は、何食わぬ顔で引き上げ 試合後に

 

「ただ間違っただけだよ。小島と天山って後ろ姿似てるじゃん」

と弁明。

 

・・・これは幾らなんでも無理がある

確かにこの日の相手には、天山広吉が居たし 小島とは体格も似ていますが、だからと言って間違うほどの そっくりさんでは無いです。

この事件が有った後も 武藤はNWO入りをした訳では無く、あくまで「間違っただけ」を強調し 翌日からも普通に正規軍として試合をします。

ですが武藤が迷っているのは、明らかで 正規軍の他の選手達との溝もますます深くなって行きます。

 

この時点では、謎の行動でしたが、数カ月後には、アメリカでグレート・ムタとしてNWOに加入を果たし その数カ月後には、遂に武藤敬司としてもNWOに加入する事になります。

当時は武藤が正規軍を裏切った事は、残念でしたが この時の一連の流れは、武藤の起こすアクション全てに、ハラハラしていました。

 

現在でも良く有るユニット勧誘のストーリー、この時のNWOと武藤がモデルになっているのは、言うまでも有りませんね。