棚橋弘至のテキサスクローバーホールド

近年のプロレス界は、高度で複雑な新技の開発も進み、古い技は忘れ去られてしまう傾向にあります。

かつては必殺技と呼ばれた技も、プロレス界の近代的な発展と共に、その輝きを徐々に失い、次第に使い手すらいなくなってしまう事も。

 

しかし そんな失われた必殺技に再びスポットが、当たる場合もあります。

棚橋弘至のテキサスクローバーホールドがその一つ

 

テキサスクローバーホールドと言えば、平成になってからは、希に決め技になる事は有っても、国内で敢えてフィニッシュとして多用した選手は余りいませんでした。

せいぜい90年代半ばのディーン・マレンコ位でしょうか?

 

変形のサソリ固めみたいな技と言っても、好きな技だったし、カッコいい技なんで再びテキサスクローバーホールドに光が当たった時は少し嬉しかったですね。

失われた必殺技に、再び光を当てたのは棚橋弘至。

 

そして初めてフィニッシュになったのは、2007年の後藤洋央紀とのIWGPヘビー級選手権。

当時の新日本プロレスは、とにかく客席も埋まらず暗黒期と呼ばれていた時代で、IWGP王座戦と言っても凱旋間もなかった後藤の初挑戦だった事もあり、棚橋の王座防衛は固いだろうと、ある程度の予想もついていた事もあってか、注目度は決して高くはない一戦でした。

 

しかしフタを開けてみれば、想像以上の大激闘になり、凱旋早々に天山広吉を潰した「後藤の勢いと強さは本物だ!」と観客が納得するのには充分なもので、新世代の台頭と暗黒期の最中での大激闘は、正しく新時代の幕開けを感じさせる一戦となり、新日本にとって転機となる試合でした。

その試合のフィニッシュとなった技が、棚橋が今までフィニッシュにした事もないテキサスクローバーホールドだったのです。

 

結果的にではありますが、普段見た事のない棚橋のフィニッシュだったからこそ意外性があり、この試合のインパクトがより強烈な物になったのでしょう。

唐突に繰り出した技で、唐突にフィニッシュになった訳ではなく、1度はロープに逃げられながらも、その後もう一度仕掛けて今度こそギブアップを奪った事で、棚橋の執念が感じられたのが良かった様な気もします。

それだけ説得力に溢れたテキサスクローバーホールドでした。

 

それまでの棚橋は、藤波辰爾から継承したドラゴンスリーパーを好んで使用していましたが、やはり現役の藤波の見慣れた技よりも、当時は使い手すら少なくなっていたテキサスクローバーホールドに目を付けたのは、良かった点です。

しかし棚橋の新必殺技として期待していたのに、その後フィニッシュになる事は余り無かったのが残念。

 

再び大舞台で、フィニッシュとなったのは、2017年の内藤哲也とのIWGPインターコンチネンタル戦でしたが、この時は反り具合が、またハンパなくて これを見ていると、もうテキサスクローバーがメインの必殺技でも良いんじゃないかと思える程に、強烈な締め上げでした。

残念ながら、この後はたまにギブアップを奪う事が何度かあった位で、大舞台やトップ選手からギブアップを取れた事はありません。

ただ最近の棚橋は、とにかくコンディションが悪いので、膝に負担がかからず説得力に溢れたテキサスクローバーホールドなら 今後の事を考えて本当にメインの必殺技にしても良いんじゃないかと思えてきます。

 

ハイフライフローも好きな技なんですけど、やはり棚橋には長く現役を続けて欲しいので、自身の身体に負担の掛からない必殺技にシフトしても良いかも知れませんね。

もう それを考える時期に来ているのかも知れません。