鈴木みのるのゴッチ式パイルドライバー

鈴木みのるは、新日本プロレスでデビューしながらも キャリア1年にも満たない時期に、新日本を退団してUWFに移籍した事で必然的に、鈴木は若い頃のキャリアの殆どをUWF系のプロレスラーとして過ごした事になります。

UWFも同じプロレスである事には違いありませんが、相手の受けを必要とするプロレス的な技は除外し、打撃や間接技、スープレックスを中心とした格闘技寄りのファイトスタイルなので、新日本でデビューした鈴木といえども、やがてUWFスタイルの闘い方を身につけていく事になります。

 

団体の解散に伴いUWFから藤原組へと流れ、UWF系で最後に行き着いたのは、船木誠勝と共に作り上げた理想とする団体パンクラス。

パンクラスでは従来のUWF以上に格闘技寄りのスタイルに特化した為に、パンクラスのトップクラスの一角であった鈴木も プロレス村から見れば、もはや遠く離れた存在だったかも知れません。

 

しかし様々な理由も重なり、2002年に鈴木は、パンクラスのリングを離れ、プロレス回帰する事になります。

その際には、元UWF戦士らしく格闘技スタイルで闘い、スリーパーホールドを暫くの間は決め技としていたのですが、プロレスのリングに馴染むにつれて鈴木のファイトスタイルにも微妙な変化が訪れてきます。

 

徐々にではありますが、プロレスの動きも取り入れ、一時期は卍固めをフィニッシュに多用していた事もありました。 卍固めは言うまでもなくアントニオ猪木の代名詞であり、猪木は新日本時代の鈴木の師匠。

この時代は「純プロレス」という言葉で、格闘技やUWFと区別されていましたが、この卍固めを使いだした時点で、鈴木は純プロレスのレスラーになっていたのかも知れません。

 

そしてプロレスにドップリ浸かり自らのキャラクターを確立させて、鈴木が最後に行き着いた技は、ゴッチ式パイルドライバー

パイルドライバー自体がUWFの概念には無い技なので、鈴木がこんな技をフィニッシュに使いだしたのは、少し意外な気もしましたが、必要以上にド派手な技という訳でもなく相手を叩き潰すのを信条とする鈴木には、ピッタリの技だとも思います。

 

「ゴッチ式」となってはいますが、パンクラス時代に繋がりのあったカール・ゴッチに伝授された技というわけでは無く(そもそもゴッチはこの技を使っていない) プロレス回帰にあたり、鈴木が独自に身に付けた技です。

やろうと思えば、誰でも出来る技かも知れませんが、鈴木は何と200㎏以上の浜亮太をもゴッチ式パイルドライバーで抱え上げ突き刺しているのだから驚き。

これは単純に「力」ではなく鈴木曰く「相手の呼吸を読んで後はタイミング」とパイルドライバーの一つを取っても、そこには職人技ともいえる確かな技術がある事が伺えます。

 

単に「世界一性格の悪い男」として睨みを聞かせているだけではなく、その裏にはしっかりとした「技術」があるからこそ、鈴木みのるという選手は外敵という立場で各団体にあがっていても、あそこまでのカリスマ性と支持を得ていたのでしょうね。