脇役宣言にみる丸藤正道のプロ意識

武藤敬司の2月21日の引退に伴い、グレート・ムタも今月22日大会を最後に、リングから去る事になった訳ですが、そのラストマッチは独特な世界観を醸し出す豪華6人タッグマッチ。

ムタはスティング、ダービー・アリンとトリオを結成して、丸藤正道、白使、AKIRAと組と対戦。

正しくムタに、引き寄せられる様に集まった顔ぶれです。

 

このメンバーの中で目立つのは、唯一普通の人間?である丸藤正道。

丸藤も華のある選手という事には違いありませんが、他のメンバーに比べるとアクが弱いというか、これがムタではなく「武藤」だったら問題ないんですが、ムタとなると少々話も変わってきて、特に今回は周りのメンバーが異質な事もあってか、普通である丸藤がかなり浮いて見えてしまいます。

 

そこは流石に、丸藤自身も感じている様で「敵味方とも、僕以外の選手の色の濃さが目立つなと。そこに組み込んでいただいたのが非常に光栄です。ワクワクする部分がありますよ。」とキャラクターの弱さで劣っている事は自覚しつつも、ファン時代からの憧れの存在だったムタやスティングとの闘いを待ちわびている様子。

しかし「色の濃さ」で負けているというなら、丸藤には「魔流不死」というもう一つの人格があるので、そちらで登場すれば、あのメンツの中でも違和感ないのでは?と思うかも知れませんが、ここは敢えて丸藤正道で行く事に意味が有るのかも知れません。

 

ムタの事を「プロレスのあらゆる神秘が詰め込まれたレスラー」と評価している丸藤だが、ムタの登場そのものが決して多くは無い為に、対戦となれば一部の選手しかムタに触れる事は出来ません。

そんな相手だからこそ「ムタという一人のレスラーの終わりではあるけど、俺には何かの糧になるはず。必ず何か得る物がある試合になると思いますよ」と…この試合で、ムタを通じて自らの進化に繋げると確信。

これは、自らもキャラクターに特化した魔流不死ではなく「素」の丸藤正道で体感するからこそ、そこに感じ取れる物があるのかも知れません。

 

あのアントニオ猪木ですらもムタの世界観に引きずり込まれてしまった事がありますが、これはムタと闘う選手は誰もが通る道。

そこで丸藤は敢えて「素の丸藤正道」で闘う事で『いかに溶け込むか』という事に重点を置いています。

これは丸藤らしい切り口だと思います。

 

ムタの世界観とは闘わずに、ムタの世界観に入る事で、得られる物がある。

やはり丸藤は、天才だなと・・

普通はなかなか、この発想には行かないんじゃないでしょうか?

 

その上で、今回の主役はムタ

どんなに凄いレスラーが来た所で、この日の主役がムタである事は、誰の目にも明らかです。

丸藤もそれを充分に理解した上で「グレート・ムタを食ってやる!とか、ダサい事は言わないです。その中で何か丸藤というものの存在価値を示せたら良い」と自ら〝引き立て役〟に徹する覚悟も見せました。

 

勝負論は別。

しかし主役であるムタを引き立てる。

プロレスに置いては、主役と脇役は常に存在しますが、丸藤クラスのレスラーが「脇役に撤する」とハッキリ言っちゃうのもなかなか凄いですね。

 

「プロなのにそんなんで良いのか?って言われるかも知れないけど、プロだからこそ、それで良いんだよって言いたい」

丸藤は最後にハッキリとこう言い切りました。

 

神輿に乗る人と担ぐ人が居るからこそ、プロレスは成り立っています。

現在の自分の立場に甘んじずに、その時の状況に応じて脇役となる事も厭わない。

 

丸藤正道は、紛れもなくプロのレスラーです。