真壁刀義「俺の人生にゴマすりなんかねぇんだよ!」

格団体には、それぞれ チャンピオンにまで登りつめたレスラーは、当然ながら結構な数に渡って存在します。

その大半は、若い内からファンの支持を得ていたり 上層部の評価が高かったり期待感が高く なるべくして王者になった選手が多いでしょう。

 

では逆に、上層部やファンからも余り期待もされていなかった選手で、王者に登りつめた選手と言えば、誰が思い浮かぶでしょうか?

 

その代表格が、真壁刀義だと思います。

彼を一言で言い表すならば「雑草」。

 

ルックスが良い訳ではなく 身体能力も優れている訳でもなく真壁は、練習熱心な事を除けば、特に目を引く事もそれ程無い地味な若手でした。

スーパーJr.への抜擢

長州と組んでIWGPタッグ挑戦

若手の内から 練習熱心さが認められ それなりの活躍の場所が与えられはしましたが、2000年に入ると鳴り物入りの鈴木健三がデビューを果たし、ヤングライオン杯でも後輩である筈の健三に、不覚を取ってしまい 屈辱にまみれてしまいます。

これが当時の会社の評価その物だったのでしょう。

 

そんな悔しい思いを胸に、真壁は半ば島流しの様な形で、プエルトリコに海外遠征に修業に出ます。

2002年 日本に凱旋を果たしますが、華々しい凱旋では無く何と他団体での凱旋試合。これは新日本の歴史に置いても類を見ないんじゃないでしょうか?

 

更には、当時若手だった棚橋弘至も台頭してきており 健三とのタナケンタッグで、ヤングライオン離れした人気を博し 真壁よりも先にG1出場を果たすなど真壁にとっては、後輩たちの影に隠れる日々が続きます。 

勿論 真壁とて腐っていた訳ではなく 練習に明け暮れ懸命に試合をこなしていくのですが、なかなか結果には結び付きません。

 

そうこうしている内に、スーパールーキー中邑真輔がデビュー、1年4カ月と言うキャリアでまさかのIWGP戴冠という 同世代の若手にとっては、ジェラシーしかない事態になります。

棚橋・中邑に柴田勝頼を加えた3人で、新闘魂三銃士の結成など 後輩の成長により ますます真壁は日影に隠れて行く事になり せっかく初出場を果たしたG1でも怪我をしてしまい途中欠場となってしまいます。

 

しかしここでも真壁は、腐りませんでした

諦めませんでした。

例え日影の中だろうと 自分のプロレスと練習漬けの日々を着実にこなし、チャンスを伺っていました。

 

そして2006年頃から新日本は暗黒期を迎え 今まで格下に見ていたインディー団体と積極的に交流をはじめます。

ここで真壁は、ようやく自分の進むべき道を見つけたのか、ついに大ブレイクを果たします。

「きれいどころは棚橋や中邑に任せる。俺はあいつらに出来ないプロレスをやる!」とインディーとの対抗戦の先頭に立ち アパッチプロレスとデスマッチに身を投じます。

 

当時 力の弱っていた新日本は、アパッチに良い様にされていたので、その中で奮闘する真壁をファンは次第に支持していきます。

いつしか真壁は、ファンの絶大な支持を経て インディーの至宝とも言えるWEWヘビー級王座も獲得し 棚橋・中邑とは違うやり方で、本当に新日本のトップへと駆け上がって行きました。

2009年には、G1クライマックス優勝

2010年には、IWGPヘビー級初戴冠

会社に期待をかけて貰えなく ファンに全く支持されなかった男が、諦めず腐らず自ら動き チャンスを掴んだ事で、団体の頂点にまで登りつめたのです。

この真壁の生き様には、多くの人が感銘を受けた事でしょう。

 

王座は、外敵の小島聡に奪われましたが、ここでも真壁はやはり真壁でした。

勿論 王座返り咲きを狙ってはいますが、層の厚い新日本において次期挑戦者になるには、並大抵な事ではありません。

 

上層部に目をかけられれば、優遇されて挑戦権をたやすく手にする事も出来るでしょう。

真壁も実際に、そんな選手を多く見て来たと思います。

言っちゃあ何ですけど 王座に挑戦したければ上層部やマッチメイカーのお気に入りになれば良いんです(実力主義であって欲しいけど)

しかし真壁は、そんな事を良しとする選手ではありません。この時の真壁のコメントがまた痺れます。

 

俺の人生にゴマすりなんかねぇんだよ!

 

カッコ良いですね

当時の真壁が、多くの人に支持されていたのが、良く分かるコメントだと思います。

上層部にゴマすりをして安易な道に進むよりも 例え列の最後尾に周る事になっても自分の足で、着実に進んでいく事を信条としている真壁らしい一言です。

 

真壁は今までもそうやって歩いて来ました。

これからも そうやって歩いていく事でしょう。

 

最近の真壁は、第一線から引いている形になっていますが、確実に一歩一歩進んで再び ゴールに辿りつくと信じています。